2015年6月11日木曜日

化学療法が効かない大腸がんに、たちの悪い「がん幹細胞」を殺す有望な新薬候補 2015年最新がん治療法


米ペンシルベニア州立大学、ネズミの実験で証明

写真はイメージ。記事と直接の関係はありません。(写真:Hans Splinter/クリエイティブ・コモンズ表示-改変禁止 2.0 一般)
写真はイメージ。記事と直接の関係はありません。(写真:Hans Splinter/クリエイティブ・コモンズ表示-改変禁止 2.0 一般
 最近注目の新しい分子標的薬が、化学療法が効かない結腸直腸がんの有望な治療薬となりそうだ。この新薬は、がん細胞を殺すだけではなく、抗がん剤が効かない原因の1つである「がん幹細胞」をも狙い撃ちにできると分かったのだ。

画期的な新薬

 米国ペンシルベニア州立大学ハーシーがん研究所を中心とした研究グループが、がんの専門誌キャンサー・リサーチ誌で2015年4月1日に報告した。

 「がん幹細胞(CSC)」は、次々にがん細胞を生み出し、いろいろな種類のがんに変化する能力も持つ。たちの悪い特殊な細胞だ。CSCは大腸がんにも存在している。

 そのため、がん幹細胞を殺す治療ができれば、がんを縮小したり生存期間を延ばしたりできる。研究グループは今回、「ONC201/TIC10」という新しい抗がん剤に注目した。

 ONC201/TIC10は、副作用を起こさないで、がん細胞だけを殺す画期的な新薬だ。「TRAIL」と呼ばれるタンパク質が、がん細胞を自殺させる仕組みを応用している。

ネズミで検証

 研究グループは以前、ONC201/TIC10を作用させたがん細胞では、「Akt」「ERK」というタンパク質を邪魔することができて、この変化により「Foxo3a」というタンパク質を作り出して、結果的にがん細胞の自殺を促す「TRAIL」を作り出せると報告した。

 「Akt」「ERK」「Foxo3a」は、どれもがん幹細胞にとって非常に重要なタンパク質。そこで研究グループは、この新薬が結腸直腸がんの「がん幹細胞」を狙い撃ちにできそうだと予想して、ネズミで検証を行った。

 検証実験では、がん幹細胞の目印になるタンパク質である「CD133」「CD44」「ALDH」が表面に出ている細胞を「がん幹細胞」とした。

がん幹細胞を殺した

 実験の結果、ネズミの結腸直腸がんでも、シャーレで培養したがん細胞でも、ONC201/TIC10はどちらにおいてもがん幹細胞を死滅させた。

 この新薬の成分「TIC10」は、抗がん剤「フルオロウラシル(5-FU)」の効かないがん幹細胞がシャーレの中で増えて塊となるのを阻止する作用を持つと分かった。

 がん幹細胞は、違う種類のネズミに移植しても、拒絶反応を起こさずにがんとして成長できる特徴を持っている。しかしONC20/TIC10を投与すると、がん幹細胞は、違う種類のネズミには生着できなくなった。この生着を阻止する効果も、5-FUよりONC20/TIC10の方が優れていた。

 さらに詳しく調べたところ、ONC201/TIC10は予想通りに、がん幹細胞でも「Akt」「ERK」の働きを邪魔していた。さらに「Foxo3a」を作り出し、結果的に「TRAIL」およびTRAILが作用するためにくっつく相手の「DR5」を生じ、がん幹細胞を自殺に追いやっていた。

 ONC201/TIC10は結腸直腸がんの根治に有望な薬となるだろうと研究グループは見ている。

文献情報

Prabhu VV et al.Small-Molecule ONC201/TIC10 Targets Chemotherapy-Resistant Colorectal Cancer Stem-like Cells in an Akt/Foxo3a/TRAIL-Dependent Manner. Cancer Res. 2015; 75: 1423-32.

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