2015年8月3日月曜日

大企業病の人の特性。


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荒木 博行

グロービス経営大学院 経営研究科 副研究科長/グロービス・オンラインMBA責任者

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イラスト:荒木博行

「大企業病」という言葉、ご存じですか?保守的で新しいことが前に進まない状態や、自分の縄張り意識が強すぎて客のことを考える前に社内抗争に明け暮れている状態、意思決定に非常に時間がかかる状態など、一般的に大企業で見られがちな傾向を総称したものです。その症状は大企業に限らず、中小企業であってもベンチャー企業にあっても見られるため、ひとつの企業体質を表す言葉とも言えるでしょう。

では、果たして「大企業病」にかかっている企業の社員はどういう特性の方が多いのでしょうか?スコラ・コンサルタントの柴田氏と神戸大学の金井教授が執筆した『どうやって社員が会社を変えたのか』(日本経済新聞出版社)を拝読したところ、まさに膝を打つようなことが書かれていたので、多少アレンジを加えながら大企業病の5つの特性として紹介したいと思います。

最近、好奇心を持って情報収集していますか?

まず大企業病の1つ目の特徴が、「視野が狭い」ということ。これは、自分の今の仕事にしか関心がないと言い換えてもよいでしょう。

2つ目が、「試行錯誤をしない」。要するに、いつも落としどころを見出すための検討ばかりをしていて、トライをしない状態です。

3つ目が、「足りないものばかりが視野に入る」。何か新しいことをする時に足りない事柄があることは当然ですが、その新しいことによって得られるものや、その先の未来像が目に入っていないのです。

4つ目が、「飛躍した非連続的思考についていこうとしない」。事を起こす際には、7割程度を視野に入れている一方で、残りの3割部分を「えいや!」とジャンプする必要があります。しかし、その3割部分の粗を探して現状維持のための否定を繰り返すばかりで、結局飛び越えることをしません。

そして最後の5つ目が、「現地現物を実行せず、ただ正論を唱え、げきを飛ばす」。正論であるがゆえに誰も反論ができない。しかし、具体的なアクションには決してつながりません。

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特に、1つ目の「視野が狭い」は強調したいポイントです。視野の狭さは、裏を返せば、自分以外の他人や会社、業界の将来に関心が向いていないということです。

たとえば「自分の所属している業界がこの3年のうちにどのようになるのか」といった点に、興味を持っていません。正しく言えば、漠然とした不安は持っていますが、「考えること」に時間を費やすことはない、ということです。日常的に自分の仕事にプレッシャーをかけられていると、自分の目先の3か月の目標達成に汲々としてしまうことも仕方ないかもしれません。しかし、将来的なもの、あるいは自分以外のことに興味を持って考えてみることは、非常に大事です。

ここでは、「好奇心」という言葉がキーワードとなります。好奇心を持てなくなっている、すなわち、世の中に出回っている情報に興味関心を寄せることができなくなっている、というのは一つの大企業病発症のサインかもしれません。

ではどうすれば好奇心を持ち続けられるのでしょうか。そのためには、自分のスケジュールを意図的にコントロールするところから始めるほかないでしょう。意図を持ってスケジュールに違うことを考える時間を入れないと、あっという間に身の回りに飛んできたボールを打ち返す時間に占拠されてしまいます。自分の24時間のスケジュールのうち、具体的に将来のことや業界全般のことを考える時間を定めないことには、視野の狭さを補うことは難しいかもしれません。

(本記事は、FM FUKUOKAのラジオ番組「BBIQモーニングビジネススクール」で放送された内容をGLOBIS知見録用に再構成したものです)
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