2015年12月24日木曜日

しなやかほっこり社会の実現を目指したワイヤレス給電技術を開発 -電池切れ ストレスからの開放に期待-


2015年12月22日

    篠原真毅 生存圏研究所教授

     本学Center of Innovation(COI)は、パナソニック株式会社、三菱重工業株式会社(MHI)と共同で研究開発を行い、電池レスセンサーと電動車いすのワイヤレス充電器を開発しました。

    背景

     ワイヤレス給電は電磁界や電磁波を用いて離れた場所の電池を充電したり、電池レスで電気機器を利用できる技術として、近年研究開発の期待が高まっています。ワイヤレス給電は「ゲームチェンジングテクノロジー」や「パラダイムシフトを起こせる技術」として考えられており、世界中の学会や産業界が注目しているイノベーション技術です。本学では長年電磁波(マイクロ波)を用いたワイヤレス給電技術の研究を行っており、2015年7月に公開したドローンを利用したワイヤレス給電センサー実験等も行ってきました。

    研究手法・成果

     現在、さまざまなワイヤレス給電技術が研究され、標準化や産業化活動が国内外で活発化していますが、研究開発の中心は磁界を利用したものであり、ワイヤレスといってもほぼ0距離でしか動作しません。今回はマイクロ波という電波を利用して数メートル先の機器を駆動する技術を新たに開発しました。マイクロ波は携帯電話等で盛んに利用されている電波で、本研究でも同じマイクロ波を利用するため、電波の干渉低減技術が必須です。また電波でエネルギーを送るために、効率も重視されます。本研究では本学と二つの企業が共同で開発を行い、電池レスセンサーの開発と電動車いすのワイヤレス充電器の開発しました。電池レスセンサーはパナソニックが担当し、医療用センサーを想定して開発をしており、新たに高効率の受電アンテナの開発や、干渉低減のためのビーム技術開発を行いました。電動車いすのワイヤレス給電システムはセンサー駆動に比べ送電電力が大きいため、干渉低減や安全性の確保が必須ですが、本研究ではビーム制御により不要放射を極力低減させた安全・低干渉システムの開発や、干渉しにくいマイクロ波発振器の開発等を、MHIが実施しました。

    波及効果

     ワイヤレスで電力を得られると、電池切れのストレス・不安から解消され、COIの他の医学関係の研究者の成果、情報技術関係、エネルギー技術関係の研究者の他の研究成果と合わせ、COIの目指す「しなやかほっこり社会」を実現することが出来ます。ワイヤレス給電技術は、先に情報がほぼ完全に無線化(携帯電話と無線LAN)した現在に残った唯一のケーブル(=電源線)をも不要とする可能性がある技術として、世界中で注目されているのは先に述べたとおりです。特に電波を用いたワイヤレス給電は本学や日本が世界を技術でリードすると同時に、標準化や法制化でも世界を牽引しています。本技術の発展を進めると平行して標準化や法制化を本学が牽引することで、ワイヤレス給電の日本発の標準を世界に広げ、デファクトスタンダードを握ることが可能となります。

    今後の予定

     電波実験局の免許を取得し、屋外実証実験を予定しています。またセンサーはまだ一般的なセンサー駆動に実験であるため、今後はCOI内の研究者と連携し、医療用センサーへの適応を目指します。

     なお、本研究(の一部)は国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)の研究成果展開事業「センター・オブ・イノベーション(COI)プログラム」の支援を受け、「活力ある生涯のためのLast 5Xイノベーション拠点」の事業・研究プロジェクトによって得られました。

    電池レスセンサー

    電動車いすワイヤレス充電器

    用語解説

    • ワイヤレス給電: コードを使わず、電磁界や電磁波で電力を送る技術
    • マイクロ波: 1から10GHz程度の電波。本研究では920MHz帯と2.45GHz帯を利用している。
    • 電動車いす: 小型電動車両。お年寄りがよく利用している。

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