2016年1月22日金曜日

乳がんの触診ロボット



乳がんの触診ロボット――。1970~1980年代、早稲田大学とパナソニック(当時は松下電器産業)がこんなロボットの開発を進めていたのをご存じだろうか。製品化には至らなかったが、30年を経た今、この流れをくむがん治療支援ロボットの開発が同大学で進んでいる。乳がんや肺がんを“切らずに治す”ロボットがそれだ。米Intuitive Surgical社の手術支援ロボット「da Vinci Surgical System(通称:ダビンチ)」の次の世代を担うような、日本発ロボットの実現を目指す。

早稲田大学 次世代ロボット研究機構 機構長で、ヘルスケアロボティクス研究所 所長も務める藤江正克氏
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 その開発拠点となるのが「ヘルスケアロボティクス研究所」。「ヒューマン・ロボット共創研究所」「災害対応ロボティクス研究所」と並び、2015年3月に早稲田大学が立ち上げたロボット研究拠点「次世代ロボット研究機構」を構成する3つの研究所のうちの1つである。

 同機構は「人と協調するロボット」の世界最先端の研究拠点を目指した組織。機械工学や情報工学、土木工学に加えて、スポーツ科学や人間科学、人文科学といった異分野の知見を取り込んだ研究を進める狙いだ。ヘルスケアロボティクス研究所はこのうち、医療や介護を含む広い意味でのヘルスケアと、ロボットの融合領域の研究を担う。研究テーマは「手術・福祉・看護支援ロボットシステムの開発」「ロボット技術のスポーツ科学への応用」などだ。

 具体的には、次のような技術の開発を目指す。「身体への融合を脳内に誘発する(身体の一部のように知覚できる)福祉ロボット」「診断治療のための穿刺(せんし)支援ロボット」「手技評価機能を有する医学教育シミュレータ」「看護理工学へのロボット技術の応用」。

がんをピンポイント治療

 次世代ロボット研究機構 機構長で、ヘルスケアロボティクス研究所 所長も務める藤江正克氏(早稲田大学 理工学術院 教授)肝いりのプロジェクトが「診断治療のための穿刺支援ロボット」の開発だ。穿刺とは、体内のがん腫瘍などに体表から針を刺して組織の一部を採ること。主に生検のために使う。

 この際、「治療まで済ませてしまう」(藤江氏)のが開発するロボットのコンセプトだ。腫瘍にピンポイントで穿刺するための制御技術などがカギを握る。

 腫瘍に針を刺して治療する技術としては、ラジオ波焼灼(しょうしゃく)術が既に実用化している。腫瘍に電極針を刺し、ラジオ波電流で腫瘍を熱凝固させる治療法だ。肝臓がんでは保険が適用されて標準治療の1つとなっており、肺がんの治療などにも利用されるようになってきた。

 1970~1980年代に早稲田大学が開発を進めた乳がん触診ロボットは、薬事承認や保険適用が実用化のハードルとなった。ラジオ波焼灼術という前例がある穿刺支援ロボットでは、こうしたハードルをクリアできると藤江氏はにらむ。今回の開発では「治験(臨床試験)までを視野に入れているのかとよく聞かれるが、そこまで取り組みたい」(同氏)。

がんをピンポイント治療

 次世代ロボット研究機構 機構長で、ヘルスケアロボティクス研究所 所長も務める藤江正克氏(早稲田大学 理工学術院 教授)肝いりのプロジェクトが「診断治療のための穿刺支援ロボット」の開発だ。穿刺とは、体内のがん腫瘍などに体表から針を刺して組織の一部を採ること。主に生検のために使う。

 この際、「治療まで済ませてしまう」(藤江氏)のが開発するロボットのコンセプトだ。腫瘍にピンポイントで穿刺するための制御技術などがカギを握る。

 腫瘍に針を刺して治療する技術としては、ラジオ波焼灼(しょうしゃく)術が既に実用化している。腫瘍に電極針を刺し、ラジオ波電流で腫瘍を熱凝固させる治療法だ。肝臓がんでは保険が適用されて標準治療の1つとなっており、肺がんの治療などにも利用されるようになってきた。

 1970~1980年代に早稲田大学が開発を進めた乳がん触診ロボットは、薬事承認や保険適用が実用化のハードルとなった。ラジオ波焼灼術という前例がある穿刺支援ロボットでは、こうしたハードルをクリアできると藤江氏はにらむ。今回の開発では「治験(臨床試験)までを視野に入れているのかとよく聞かれるが、そこまで取り組みたい」(同氏)。

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