2016年10月19日水曜日

副作用でやせる危険が2倍?年間400億円売れる薬の影響を検証 文献の調査から


副作用でやせる危険が2倍?年間400億円売れる薬の影響を検証の写真

写真はイメージです。本文の内容とは関係ありません。 (C) Nenov Brothers - Fotolia.com


認知症の治療薬の一種にコリンエステラーゼ阻害薬があります。多くの人に使われている薬ですが、すべての薬と同様、副作用もあります。これまでに報告された研究データをまとめて、体重減少が現れる頻度が調査されました。 

ここで紹介する研究は、専門誌『Journal of Neurology, Neurosurgery & Psychiatry』に報告されたものです。

研究班は文献の調査を行い、これまでに認知症の人にコリンエステラーゼ阻害薬を使った研究から報告されているデータをまとめることで、体重減少が起こる頻度を調べました。

 

コリンエステラーゼ阻害薬(アセチルコリンエステラーゼ阻害薬)は、脳内の神経伝達物質が分解される働きを抑えることで、認知症などに効果を現す薬です。

日本でも多くの人に使われています。商品名にアリセプト、レミニール、イクセロン、リバスタッチなどがあり、年間の国内売上高はアリセプトだけで400億円を超えています。

 

調査から次の結果が得られました。

9件のRCTにおいて(フォローアップの中央値5か月)、アセチルコリンエステラーゼ阻害薬を使用していた人は偽薬を使用していた人よりも頻繁に体重減少を経験した(オッズ比2.18、95%信頼区間)1.50-3.17、P<0.0001、I2=29%)。

見つかったうち9件の研究のデータから計算すると、コリンエステラーゼ阻害薬を使っていた人では、偽薬を使っていた人の2倍近い頻度で体重減少が起こっていました

研究班は「アセチルコリンエステラーゼ阻害薬治療は認知症の患者において体重減少に関与し[...]リスクは2倍に増加する」と述べています。

 

コリンエステラーゼ阻害薬が体重減少を引き起こす可能性があるとする研究を紹介しました。

すべての薬には副作用があります。コリンエステラーゼ阻害薬の副作用としては、体重減少以外にも不整脈などがすでに知られています。副作用を考えても効果のほうが勝るという判断で薬は使われます。副作用による害を最小限にとどめるための注意が大切です。

認知症のある高齢者では栄養状態が悪い場合もあり、体調の変化がないかよく観察しながら薬を使う必要があります。

◆参照文献

Acetylcholinesterase inhibitors are associated with weight loss in older people with dementia: a systematic review and meta-analysis.

J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2016 Jun 3. [Epub ahead of print]

[PMID: 27261502 ]

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