2016年10月29日土曜日

最小オープンリーディングフレーム「AUG-stop」を介したリボソームを舞台とし た新たな遺伝子発現制御機構の発見 -- 北海道大学


・翻訳開始コドンの直後に終止コドンが続く最も短いオープンリーディングフレームである「AUG-Stop」で、リボソームがホウ素を感知して停止し、さらにmRNA分解を引き起こすことを発見。
・シロイヌナズナは、植物の必須栄養素の一つであるホウ素の細胞内の濃度に応じてホウ素輸送体の合成を調節して環境条件に適応するのに、この機構を用いていることを発見。
・今回発見した応答機構は動物でも機能する普遍的なもので、さまざまな栄養や細胞内環境に応じた多くの遺伝子発現制御に重要である可能性があり、生物機能を人為的に制御する新たな方策の開発につながる。


○研究成果の概要
 遺伝子の中でタンパク質のアミノ酸配列を規定する領域をオープンリーディングフレーム(ORF)と呼ぶが、翻訳開始を示すコドンAUGと翻訳終止を示すコドンUAAのみからなるAUGUAAという配列は考えうる限り最も小さいORFである。これまで、この小さなORFが特別な機能を持つとは考えられていなかった。シロイヌナズナのホウ素輸送体であるNIP5;1の発現は、この最も短いORFでリボソームがホウ素濃度依存的に停止することを介した新たな仕組みで制御されていることが明らかになった。
 本研究は、タンパク質合成装置が合成の過程で無機栄養を感知し、その挙動を変えることを通じた遺伝子発現制御機構を初めて示したものである。このような制御は真核生物に広く存在している可能性が考えられる。

○論文発表の概要
・研究論文名: The Minimum Open Reading Frame, AUG-Stop, Induces Boron-Dependent Ribosome Stalling and mRNA Degradation(AUG-Stopなる最小のオープンリーディングフレームがホウ素に応答したリボソームの停止とmRNA分解を誘導する)
・著者: 田中真幸、反田直之、藤原 徹(東京大学大学院農学生命科学研究科)、山角祐介、秋山 徹(東京大学分子細胞生物学研究所)、山下由衣(北海道大学大学院生命科学院)、三輪京子(北海道大学大学院地球環境科学研究院)、室田勝功、尾之内均(北海道大学大学院農学研究院)、千葉由佳子(北海道大学大学院理学研究院、大学院生命科学研究院)、平井優美(理化学研究所環境資源科学研究センター)、内藤 哲(北海道大学大学院農学研究院、大学院生命科学院)
・公表雑誌: The Plant Cell
・公表日: 米国東部時間 2016年10月19日(水) (オンライン公開)

▼本件問い合わせ先
 所属・職・氏名: 北海道大学大学院農学研究院 教授 内藤 哲(ないとう さとし)
 TEL: 011-706-2800
 FAX: 011-706-4932
 ホームページ: http://www.agr.hokudai.ac.jp/arabi/

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【リリース発信元】 大学プレスセンター http://www.u-presscenter.jp/

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