2016年11月13日日曜日

ブラジル産プロポリスの糖尿病予防効果には免疫が関与している

勉強の為に引用しました。



名古屋市立大学大学院 医学研究科 北村 浩(2011年度採択)
※ 現・酪農学園大学 獣医学群獣医学類

糖尿病は全世界で約3億人以上の患者がいるとされている疾患である。日本でも患者数が急増しており、予備群を含めると、2012年現在で2,050万人に達すると推定されている。そして、このうちの9割以上が、不適切な生活習慣の末に発症する2型糖尿病の患者である。2型糖尿病は、糖尿病網膜症や糖尿病腎症などの様々な合併症を引き起こすほか、心筋梗塞や脳梗塞、アルツハイマー型認知症といった重大な疾患の原因となることから、その克服は健康長寿を達成するための大きな課題といえる。

そこで、名古屋市立大学大学院医学研究科の北村浩准教授(現・酪農学園大学獣医学群獣医学類・教授)らの研究グループは、肥満を原因とした2型糖尿病に対するブラジル産プロポリスの影響を確認するとともに、抗糖尿病作用に関わるメカニズムの解明を試みた。注目したのは、脂肪組織に存在する免疫細胞、すなわち、M1型およびM2型のマクロファージと、好酸球である。M1型のマクロファージ(M1マクロファージ)は炎症性、M2型のマクロファージ(M2マクロファージ)は抗炎症性の免疫細胞であり、M1マクロファージとM2マクロファージの比(M1/M2比)が大きくなると、組織が炎症状態になり、2型糖尿病発症の大きな要因となるインスリン抵抗性(※)が引き起こされる。また、好酸球は血糖値の上昇を防ぎ、インスリン抵抗性の発症を抑えることが報告されている。
※ インスリン抵抗性…血糖値を下げるホルモンであるインスリンが効きにくい状態のこと。

北村准教授らは、肥満モデルを2グループに分け、それぞれに、ブラジル産プロポリスのエタノール抽出物を含む液(5%プロポリスエキス)、または含まない液を、週2回の頻度で12週間与えた(n=9)。そして試験期間終了後に、血糖値、総コレステロール値、および脂肪重量を測定。同時に、脂肪組織における免疫細胞集団の組成や、関連遺伝子の発現を解析した。その結果、プロポリスエキスを与えたグループでは、与えなかったグループよりも、血糖値と総コレステロール値が有意に低くなり、内臓脂肪重量が顕著に減少した。脂肪組織に含まれる免疫細胞については、M1/M2比の低下と、インスリン抵抗性を抑える好酸球の著しい増加が見られた(図)。さらに、動脈硬化の促進に関わる遺伝子の発現抑制も認められた。

プロポリスエキスを与えたグループでは、与えなかったグループよりも、血糖値と総コレステロール値が有意に低くなり、脂肪重量が顕著に減少した。脂肪組織に含まれる免疫細胞については、M1/M2比の低下と、インスリン抵抗性を抑える好酸球の著しい増加が見られた。

以上の結果から、ブラジル産プロポリスは脂肪組織における免疫細胞集団の組成を調節することによって、肥満を原因とした2型糖尿病を改善するものと推察された。さらに、動脈硬化など、メタボリックシンドロームに関わる疾患を予防する可能性も示された。臨床での応用に向けたさらなる研究が望まれる。



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