2017年1月29日日曜日

専門家も指摘 豊洲市場開場より「築地存続」がお得の根拠


日刊ゲンダイDIGITAL
2010年に構造設計集団(SDG)渡辺代表が打ち出した「築地存続プラン」
 約6000億円もの整備費を投入した豊洲市場は今さら白紙撤回できない――。こんな話が一部メディアの報道や、都庁内でもささやかれているが、そんなことは全くない。現時点で年間100億円もの赤字をタレ流すことが分かっている豊洲市場をオープンするよりも、既存の築地市場を再整備した方が"お得"なのだ。 

 日刊ゲンダイは、赤字覚悟で豊洲を開場した場合と、今の築地を再整備した場合の今後10年間の"収支"について検証した。 

 まずは、問題山積の豊洲だ。都の試算によると、豊洲は毎年100億円の赤字が出るという。 

 つまり、今後、10年間で1000億円のマイナスだ。さらに、猛毒シアンなどが検出された地下水対策のため、建物地下空間の床にコンクリートを張る必要も出てくるだろう。建築エコノミストの森山高至氏によると、この工事にかかる費用は約500億円。つまり、すでに豊洲整備に投じた6000億円に加え、10年間で1500億円、計7500億円のコストが必要になる。築地跡地の売却益は3500億円程度と見込まれているから、差し引きで4000億円の「赤字」だ。 

 一方、築地再整備の場合はどうか。

 中央卸売市場によると、築地の収支は経常損益が年間10億円前後のプラス。つまり、10年間で100億円だ。ここに使用しない豊洲市場を売却した場合、「2500億円程度」(不動産業界関係者)を見込めるというから、計2600億円の収入が見込める。 

 築地市場の場合、「新たに市場を造り直すわけではなく、現状の骨組みを生かしたまま工事を進められるので、莫大な費用は必要ない。東京駅のリニューアル工事が250億円程度だったので、築地の規模を考えると費用は2倍強の600億円が妥当」(森山氏)というから、これまで費やした豊洲の整備費用(6000億円)を考えると、収支は4000億円の「赤字」。

 つまり、同じ「赤字」額なのだが、豊洲の場合、すでに"ポンコツ"との声が出ている「地下水管理システム」などのランニングコストもかさむ。豊洲と築地のどちらを使用するべきか、おのずと結論が出るだろう。 

■テナント収入は10年で4000億円 

 築地再整備を訴える構造設計集団(SDG)代表で1級建築士の渡辺邦夫氏もこう言う。 

「まず、築地市場の地上に20メートルの柱を何本も立て、その上に3層の構造物(人工地盤)をのせる。さらにその上に6階建ての建物を建築する。計10階建てで、70メートル前後の高層建築物を造る。1~3階をショッピングセンターにして、4~6階に市場を造り、7~10階はオフィス。これなら、工事中に1階部分で業者も仕事を継続できます。おそらく工期は9年ほど。立地がいいので、10年程度のテナント契約で約4000億円の収入が見込めると思う」 

 渡辺氏の案は2010年、当時の都議会民主党が再整備案を公募した際に示されたものだ。小池知事はこの「渡辺案」を復活したらどうか。 

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