2017年1月4日水曜日

日本に行ったら殴られるんでしょ?中国人は怯えている(誤解)


花園 祐
中国人旅行客に大人気の京都の伏見稲荷大社

「信じられないかもしれませんが、中国人は日本に行ったら日本人に殴られると本気で信じてるんですよ」

 数年前、筆者が観光庁関係者に中国人の訪日旅行状況について取材を行った際、担当者はおもむろにこう切り出しました。

日本は「危険地帯」?

 日本人が路上でいきなり中国人に殴りかかるなんてことは、もちろん普通はあり得ません。一体なぜなのかと詳しく話を聞いてみたところ、どうも中国で報じられる日本のニュースが偏っているため、日本人が普段から中国人を敵視していて、路上で中国人を見つけようものなら襲いかかってくると多くの人が誤解しているとのことでした。

 確かに日本でも、中国関連のニュースは過激な日本批判や反日デモの映像などが目立つため、中国を訪れたことのない日本人からすると、中国は日本人にとって非常に危険な場所だと信じ込んでいる面があります。

 実際に、筆者が初めて中国で勤務する前、従姉弟から「あんた中国行ったら殴られるんちゃうん?」と言われました。その従姉弟も「日本人は中国に行ったら殴られる」と誤解していたのです。

 もっとも、中国の工場で、筆者が問題行動を繰り返す中国人スタッフを注意した際、逆上したそのスタッフにスチール棒で殴られ、顔面から出血したこともあるので、従姉弟の言っていたことはあながち間違ってはいませんでしたが・・・。

 話を戻します。中国人が日本を危険地帯だと誤解している点について、本当のところはどうなのか中国人の知人らに確認してみました。すると、「そういう面も確かにある」と肯定されてしまいました。

 近年は訪日旅行に行く中国人も増えて、そうした誤解は徐々に少なくなってきてはいるものの、それでもまだ日本は中国人にとって危ない場所だと考える人が根強く存在し、訪日旅行をためらう要因になっているそうです。

 以上の話は観光関係者の間ではよく知られている話ですが、日本で見聞きする中国人の爆買い関連ニュースではあまり報じられていないようです。そこで今回は、中国人の訪日旅行関連であまり報じられることのない事実や、実際に旅行した中国人の感想などについてまとめみたいと思います。

京都に「一休さん」を見出す

 先ほどの観光庁関係者への取材では、訪日旅行ルートについても話が及びました。担当者によると、中国のドラマで撮影場所に使われた北海道と、東京から箱根を経由して関西方面に至る、いわゆる「黄金ルート」が圧倒的多数を占めているとのことです。そして今後は、関西圏が高い潜在力を持っているとのことでした。

 その時の取材から数年経ちましたが、その担当者の指摘は少なからず当たっているようです。現在、中国の書店で訪日旅行関連のガイドブックを眺めていると、かつてはなかった大阪や京都を単独で取り上げたガイドブックが多数並んでいます。また、周囲の中国人に話を聞いても、関西圏だけを訪れる日本ツアーに参加したという話をこのところよく聞きます。

 こうした関西ツアーに参加した中国人に、具体的にどこが気に入ったのかと尋ねると、多くの人は真っ先に京都の伏見稲荷大社の名を挙げます。中国で出版される日本ガイドブックでも、伏見稲荷大社がよく表紙になっています。あの鳥居が連続して並んでいる光景が印象に残るとのことで、境内のあちこちにある狐の像もチャーミングだという声を女性を中心によく聞きます。

 正直言って、筆者にとっては、中国人が京都の観光地に興味を示すことはやや意外に感じました。というのも、京都の寺社仏閣などは古代中国の文化に影響されて造られたものが多く、欧米人ならまだしも中国人からすれば見慣れているはずだし、それほど新鮮に映らないのではと思っていたからです。しかし、中国人の友人からある説明を受けて、深く納得させられました。つまり、「中国のお寺は文化大革命の頃に大半が壊されて、今はもうほとんどない」というのです。

 また、京都の寺社仏閣を見た際の感想について詳しく聞いてみると、なぜだか多くの中国人がみな口を揃えて「一休さんを思い出す」という妙な感想を漏らします。

 またなんで一休さんが出てくるのかさらに聞いてみると、日本のテレビアニメの「一休さん」(中国名「聡明的一休」)が中国でもかつて放映されており、老若男女問わず幅広い層の間で高い人気を得ていたそうです。そのため、今でも一休さんを尊敬している中国人が多いとのことでした。

 言うまでもなく、京都は一休さんが実際に活動した場所です。林立する寺社仏閣がアニメの中に映っていた光景と見事に重なるため、中国人からすれば外国であるにもかかわらずデジャヴュを覚え、深く感動するのだそうです。

和牛に興奮する中国人女性

 訪問地のほかに訪日旅行で印象に残ったことは何かと尋ねると、女性の場合はほぼ必ずといっていいほど「(高級)和牛がうまかった」と、本当に目を輝かせて話してくれます。

 現在、中国は日本や米国からの牛肉輸入を規制しています。そのため、外国産の牛肉といったらオーストラリア産しかありません。おいしい牛肉を扱っている店もあることはありますが、全体として中国の牛肉料理はあまりおいしくありません。焼き肉サイズならまだしも、ステーキサイズとなるとほぼ絶望的です。

 そうした国内状況を反映したせいなのか、中国人は和牛に対して非常に高い関心を抱いています。松坂牛だけでなく神戸牛や近江牛など、和牛ブランドをやけに細かく把握しており、「日本の松坂牛ってどれだけおいしいの?」と、あまり松坂牛を食べたことがない筆者に難しい質問を吹っかけてくる中国人もいます。

 中国国内ではどうあっても食べることができない幻の食べ物ということもあり、訪日旅行では和牛を食べに行くことを主目的にする中国人が、特に女性が大勢います。そして実際に日本で和牛を食べた彼女らの感想は、上記の通り大満足そのもので、これ以上ないくらい絶賛し続けるのです。中には、人に会うたびに「和牛はうまかった」と言ってまわる人もいます。筆者はそういう人に会うと念のため「日本人は毎日高級和牛を食べてるわけじゃないよ」と釘を刺すようにしています。

 最後に、和牛ブランドが中国でどれだけ浸透しているかを示す筆者の体験談を1つ紹介しましょう。

 ある日、上海で昼食に台湾料理屋に立ち寄ったところ、メニューになぜか「松坂豚肉」というものがありました。これは何かと店主に聞いたところ、「日本で松坂牛って有名なんでしょ」とだけ言われました。味はまぁ悪くありませんでしたけど。

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