沖縄科学技術大学院大学(OIST)は、子宮頸(けい)がん細胞の移動を阻害する分子の作製に成功したと9日、発表した。この分子によってがん細胞の動きが固定され、最終的に死に至る。OISTは次の段階に動物の体内での実験を予定。研究を進め、将来的には放射線治療や抗がん剤などがいらない、身体の負担を減らすことができる新たながん治療の今後の研究に役立てたい考えだ。

子宮頸がん細胞の動きを阻害する実験の流れ ※OIST提供

 OISTのグワンイン・リー博士、イェ・ジャン准教授ら研究チームと、日本電子会社の研究者らの協力の下で実験した。

 がん細胞は体内を動き回る特性があり、正常な組織にも病巣を広げるなどがんの転移の要因にもつながっている。研究はがん細胞そのものではなく、細胞膜内にある物質で、がん細胞の運動に必要な「脂質ラフト」に焦点を充てた。

 作製した分子を子宮頸がん細胞が入った培養基へ一緒に入れると、作製分子が自ら作る繊維質が伸びて脂質ラフト同士を結合させる。脂質ラフトを固定することによって、がん細胞もピンで留めたように動けなくなる。それでもがん細胞は移動しようとするため、結果としてがん細胞は薄く広がり続ける。開始から8時間以内には広がったがん細胞が破裂し、死ぬ。

 研究成果は米国の化学学術誌「ケム」に日本時間10日午前2時に掲載される