2019年7月2日火曜日

データ戦略の会社が考える「AI導入がうまくいかない3つの理由(後半)」


勉強の為に転載しました。


武田 元彦 / DataStrategy Inc. CEO

フリーのデータサイエンティストを経て、新規事業開発や業務自動化、データ駆動型マーケティングのための技術導入全般をディレクションするDataStrategy創業。帝京大学講師(マーケティングサイエンス)、ナレッジ・マーチャントワークス株式会社社外取締役(データサイエンス担当)


* AI導入が上手くいかない理由を、AnyTech社の代表島本さんと対談形式でお送りしています。この記事は後半になります。前編の記事はこちらから
プランニングをいかに適切にできるかが最重要。うまくいっていない場合でも再プランニングを検討する
-- 今度は「こうやれば、うまくいった」「うまくいく」というご自身の経験からお話しいただければと思います。
武田:事前のプランニングが一番重要だと考えています。こういうデータと技術があれば、これぐらいの精度のものはできそうだ、ということを事前にプランニングして、検証し、実際に使えるものを開発していく、というところが重要ですね。
タスク設定が難しければ精度は出ませんし、精度が出ても事業(P/L)へのインパクトがなければ、後から振り返ったときに「なんだったのだろう?」ということになりかねません。精度が出そうか、事業インパクトがありそうかという視点でタスク設定をする必要があります。
AI導入の事業へのインパクトの出し方としては、大きくいうと顧客向け(プロダクトに組み入れる)と社内向け(コスト削減)に分類されます。顧客向けであればAIに求められる精度水準も高くなりますが、社内向けであれば、AIを単独で使うのではなく、AIと社内人員とを組み合わせて行うことで、結果として業務の精度を上げたり効率を上げたりといったこともあります。
今あるデータや技術をもとに、どの程度の水準であれば達成できそうか、そのためにはどう事業に組み込むかを適切に設計する必要があります。
島本:結局僕もプランニングの話になってしまいます。プランニングというものの中に、しっかりした検証やPoC(Proof of Concept、概念実証のための試作品を作ること)の開発を組み込んだプランニングと捉えることが大事だと考えています。
従来のプランニングはあくまで開発着手する前のものという認識で、計画をしっかりと練ってから作り始めていくというのが一般的です。しかし、AI開発の場合はPoCを作ることでようやくある程度確度のあるプランニングができるので、「プランニングの中にPoCはある」という前提でプロジェクトを進めるのが重要だと考えています。そうしないと最初のプランニングが机上の空論になってしまい、ズレた予算・期間・精度と全体的にズレたものになってしまうこともあり得ます。
-- 例えば「AI導入を既に実施しているがうまく精度が上がらない」場合は、どうしたらよいでしょうか?
武田:3ステップあります。人間がやっている判断を再現することが精度向上の近道なので、まずは実際にその業務の現場担当者が何を見て判断しているのかをきちんと把握することです。それを踏まえて2つ目は、その人が判断材料としている情報を「きちんとデータ化して入れましょう」です。3つ目は、その上で「アルゴリズムを改善して頑張りましょう」です。
すごいアルゴリズムを開発できる人を連れてくれば精度が上がるのでは、と一般的には思われるかもしれません。もちろんそれも大事です。しかしデータがダメだとアルゴリズムでどう頑張っても難しいので、まずはデータをリッチにしてアルゴリズムを頑張る、というのが王道です。
島本:僕も2つあって、チューニングの方法を再検討する、見直すということがあります。チューニングは、かなり人力というか、属人(その人に属すること)的な部分も多いし、この事業だったらこの方法が良いという正解があるわけでもないので、そこは再検討の余地がありますし、違う手法をもっている企業に相談に行くという手もあるかもしれません。
2つ目は逆にチューニングの問題ではない場合も多々あるので、最初の設計から見直すという、事業の意思決定としてはかなり痛手というか損切りとして痛いのですが、その方がスムーズにいくというパターンもあります。この点に関しては、逆に従来のシステム開発に近いかもしれません。途中まで作ってしまったけれど、そもそも設計が良くなかったということになります。
AI開発パートナー選びの重要性
-- 実際AI開発を進める場合にパートナーが必要になることも多いと思いますが、AI開発のパートナー選びについて教えていただけますか?
武田:AIの技術は非常に幅広くて、かつ日々進化しています。AIに関連したデータ分析ができる人材も非常に人気で、需給が逼迫(ひっぱく)しているという状況を踏まえると、AI導入に関して必要な知識や人材を一つの会社内で賄うのは非現実的になっていると思います。
無理に全部自社で実行しようとせずに、適切なタイミングで適切なパートナーを選び、良い意味で「使っていく」というのが必要だと思います。
また、「良いベンチャー企業にアクセスできない」という話もよく聞きます。そもそもどこが技術をもっているか分からない。そうならないためにも、普段から良いコミュニティーにアクセスすることは重要だと思っています。技術をもったベンチャーの周りには、きちんと技術をもったベンチャーがいますし、技術をもったエンジニアの周りには、技術をもったエンジニアがいると思います。
島本:AnyTechはフリーランスや本業以外の仕事をするトップエンジニアのコミュニティー集団です。その経験から言うと、各専門家が必要だという話に加えて、さらに2つあります。
1つはその領域の失敗経験があるかどうか。技術力が高いところは失敗経験も豊富なので、それが1つのサイン(判断材料)になります。
もう1つは失敗だけでもよくないわけで、イテレーション(ソフトウエア開発、特にアジャイル開発における短い間隔で反復しながら行われる開発サイクルのこと)のサイクルが早いかどうかになります。1つのマイルストーンを達成するのに1年、2年と掛かるのではなく、そこを細分化してイテレーションを回していけるかどうかがよいパートナーの指標になるのかなと考えています。新しい技術が出てくるのも早いのでそれらを取り入れられるかどうかというのもイテレーションの早さであり、重要だと考えています。
AnyTechもさまざまな開発を通じて失敗経験を積んでおり、適切なサイクルの設定の勘所も分かる開発サービス集団です。

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