2019年11月18日月曜日

過労死ラインは80時間|労働時間の減らし方と労災認定の基準

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弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤康二 弁護士
このコラムを監修
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過労死ラインとは、働き過ぎにより健康障害が生じて、労働災害と認定の因果関係の判断できるかどうかのために設けてある、時間外労働時間の目安となる時間です。

長時間労働が当たり前ともなってきている、現在の日本。自身の会社で、長時間労働で疲弊されている方も多いはずです。なにか対処できる方法は無いのでしょうか。

今回は、過労死ラインと労災認定の基準と、長時間労働を減らすためにできることを解説していきます。


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過労死ラインと健康障害の関連性


それでは、過労死ラインがどのよう機能するかというと、労働者の健康障害の発生と、労働社との間の因果関係を判断するために設けられています。

過労死ラインは80時間

現在の労働行政では、一応、過労死ラインは80時間(月に20日出勤とすると、1日4時間以上の残業・12時間労働)とされています。これは、健康障害の発症26ヶ月間で平均80時間を超える時間外労働をしている場合、健康障害と長時間労働の因果関係を認めやすいという目安です。

また、発症1ヶ月前は、100時間(月に20日出勤とすると、1日5時間以上の残業・13時間労働)を超える時間外労働をしている場合も、同様に健康障害と長時間労働の因果関係を認めやすいとされています。

これは、あくまで目安であって絶対的なものではありません。過労死ラインを超えていないと、健康障害が労働災害と認められないわけではありません。

一般的には6カ月を平均して45時間を超える時間外労働が行われた場合健康障害と業務との関連性は強まっていき、これを超えて期間外労働時間が長くなるにつれて、その因果関係はより強まっていくとされています。そして、過労死ラインに達する程度に至った場合には、相当程度因果関係が認められるという考え方を取っています。

過労死ラインを超えて働かせることは違法ではないのか?


現在、過労死ラインを超えて、働き続ける会社員の方も少なくはないかと思います。「こんな過労死の危険性を従業員に与えて、会社に罰則はないのか?」と思われている方もいるのではないかと思います。

労働基準法は、長時間労働についても一定のルールを設けていますので、同ルールに違反した場合は会社による残業指示は違法となります。以下、当該ルールについて簡単にごせつめいします。​

残業をさせるにはサブロク協定を結ぶ必要がある

まず、従業員を残業させるには「サブロク協定」というものを結ばなくてはなりません。これは、労働基準法36条に記載されてある「残業をさせる場合には、労働組合等と協定を結ばなくてはならない」という内容に沿った協定です。

残業が全く無い会社など、ほとんどと言って無いでしょうので、通常このサブロク協定が結ばれています。(結ばず残業をさせていると違法です。)この、サブロク協定で、時間外労働の上限時間が設けられており、原則として1ヶ月45時間までとなっています。

この45時間を超えて時間外労働を行なわせた場合、それは違法行為であり、悪質な場合には「6カ月以下の懲役刑または30万円以下の罰金刑」という刑罰が科されることもあります。

正規の残業代が支払われていないといけない

また、正規の残業代を支払っていないようであれば違法になります。本来、時間外労働をさせると、通常の賃金から25%の割増賃金を支払わなくてはなりません。

更に平成22年の改正により、時間外労働60時間を超えると、50%の割増賃金を払う必要があります(一部中小企業を除きます)。分かりやすいように、1時間あたりの賃金が1,000円だったとすると、以下のようになります。

このように通常であれば、従業員を残業させればさせるほど、残業代がかさむ、従業員の集中力や生産性が低下する、過労死のリスクが出るというデメリットが多くあります。そこで、経営者が考えることは、残業時間を減らすか(良い経営者)、残業代を払わないか(悪い経営者)のどちらかになってくるのではないでしょうか。

長時間労働が常習的に行なわれているのに残業代が支給されない会社は、何かしらのカラクリを使って残業代を抑えていることが考えられます。詳しくは「形を変えるサービス残業の種類」をご覧ください。

労働基準監督署に指導してもらえる

36協定の上限時間を超える長時間労働は違法であるため、労働基準監督署に「残業時間が長いので減らすように」と指導を入れてもらうことも出来ます。時間外労働が45時間を超える月が続くようでしたら、一度、労働基準監督署に相談に行ってみてはいかがでしょうか。



過労死の症状と例とその前兆

過労による身体の影響は、主に脳と心臓に出てきます。また、仕事へのプレッシャー、パワハラなども重なり精神疾患から、自殺をしてしまう人も出ています。睡眠不足、過労により居眠り運転・風呂場での事故死なども過労死として認定された例があります。

脳梗塞・くも膜下出血

脳の血管が詰まる脳梗塞や、脳の血管から出血があるくも膜下出血など、脳血管疾患いわゆる脳卒中が過労死でも多くなっています。

脳卒中の前兆としては、
・顔や手足の片側が麻痺する
・ろれつが回らない、口が閉じない
・めまいや立ちくらみ
・目の焦点が合わない
などがあります。

脳梗塞をチェックするFAST法

前兆に心あたりがある方は、FAST法というチェック方法があります。試してみて、1つでも当てはまるようでしたら、病院に診てもらうようにして下さい。

・FACE(顔):口の形を「イー」とやった時に、片側に引きつらないか
・ARM(腕):腕を正面に上げて(前にならえの形)、10秒間目を瞑り、腕が下がらないか
・SPEECH(話し方):短い単語、例えば「明日は休み」などをしっかり言えるか
・TIME(時間):上記に当てはまれば、すぐに病院に行くこと

心筋梗塞・虚血性心疾患

心臓を動かす筋肉の異常や、心筋の血管のつまりなどによる心疾患も過労死では多く見られます。

心疾患の前兆としては、
・胸やみぞおちを圧迫するような痛み
・左肩から背中にかけての痛み
・吐き気
・冷や汗
・奥歯や下顎の痛み
・左手小指の痛み
・呼吸困難や息切れ
などがあります。当てはまる方は、無理に働き続けることは危険です。一度病院で診てもらうようにして下さい。

過労自殺

過労によるうつ病が原因で、自殺してしまうことも過労死として認定されます。

うつ病の前兆としては、
・睡眠障害(眠れない・起きれない)
・何をやっても楽しくない、趣味が無い
・イライラしたり、焦燥感がある
・集中力の低下、考えがまとまらない
・死にたいと思うようになる

以下のような症状が当てはまるようであれば、一度心療内科や精神科の診断を受けるようにして下さい。うつ病の原因を取り除くことも大事ですが、うつ病の症状を緩和することが先決です。

睡眠不足・過労による事故

長時間労働による過労や睡眠不足が原因で、勤務中・通勤途中の交通事故(居眠り運転)や、風呂場での溺死が労災と認定されたケースも有ります。以下の様なケースが当てはまるようでしたら、身体を休めることを即刻考えるべきです。

・記憶力、集中力の低下
・急に意識が飛ぶ
・1日中眠気に襲われる
・イライラする、焦燥感がある
・吐き気、めまい


長時間労働で身体に支障が出れば労災と認定される

上記のような症状が出てきて、病院から心疾患やうつ病などと診断されれば、労災として認定されることがあります。ここで判断基準になってくるものが、過労死ラインです。

脳・心疾患の場合

上記でも少し触れたように、脳・心疾患の発症前2~6ヶ月の間に、平均して80時間の時間外労働や、発症1ヶ月前に100時間を超える時間外労働をしていると、脳・心疾患との関連性が高いとされています。

また、発症前1~6ヶ月の時間害労働が45時間を超えていると、徐々に関連性が高く見られます。45時間以内だと、労働時間での関連性は低いと判断される事が多いでしょう。

精神疾患の場合

うつ病などの精神疾患の場合、発症の1ヶ月前に160時間、3週間前に120時間の時間外労働があると、労災と認定される可能性が高くなります。また、発症前2ヶ月連続で120時間、3ヶ月連続で100時間の時間外労働がある場合も、関連性が高くなります。

1ヶ月に時間外労働が100時間程度の場合でも、パワハラや転勤、2週間以上の連続勤務などの心理的負荷のある他の要因が当てはまるようであれば、関連性は高いと判断されることもあります。

健康障害が出ていて、労災に認定されるかもと思った方は、まずは相談することから始めて下さい。労働問題の相談を受けてくれる窓口まとめ

労働時間を減らして過労死ラインを超えないためにできること


まだ健康障害が出ていない方でも、無理をしすぎているといずれ体に影響が出てきます。こちらでは、過労死ラインを超えないように労働者からできることを記載します。解決への参考にしていただければと思います。

労働基準監督署に報告する

上記でも説明しました。恒常的に時間外労働が月に45時間を超えているようであれば、労働基準監督署に報告を行ない、指導してもらうことが出来ます。メリットとしては、匿名での報告が可能なので、在職中での社外への報告も可能となっています。

しかし、デメリットとして、労働基準監督署は抱えている案件の数や重要度によってはなかなか動いてくれないこともあります。特に何の根拠もないと、労基署は動きません。まずは、恒常的な時間外労働が続いている証拠(タイムカード等)を集めましょう。

正規の残業代を請求する

長時間労働が蔓延する会社では、コストカットのためにありとあらゆる手段を使い、残業代を払わせない仕組みを取り入れている場合が考えられます。正規の残業代を払わざるを得なくなれば、会社も長時間労働を控えるはずです。

残業代を抑える方法は、法の目をかいくぐってグレーゾーンでやっているだけで、正当な方法を取れば支払われる可能性も十分にあります。残業代請求に関して詳しくは「残業代請求の全手順」をご覧ください。

残業代請求の証拠を取り出します

成果にフォーカスする

少し柔軟な考え方をして、働き方を変えるだけでずいぶんと楽になることもあります。頑張って働き過ぎたり、うつ病になってしまう方には、真面目に考えすぎてしまう傾向があります。

そんなこと通用しないようなブラックな会社もありますが、簡単に言えば、会社は従業員に労働時間ではなく成果を求めているのです。成果さえ出せれば、とやかく言われる筋合いも無いのです。

「あぁ~今日も夜中まで仕事か~」と思う前に、どうやれば早く仕事が終わるかを考えてみてください。また、必然的に労働時間が長くなってしまう職場の方でも、1日十何時間働く中でも、力を抜ける時間帯があるはずです。うまく力を抜くコツを身につけて下さい。

働き方を柔軟に考えるには、会社がどのような成果を求めているかを考え、それを早く達成するために何ができるかを考えることと、力を抜くところでは力を抜くことです。

まとめ

いかがでしょうか。過労死ラインは、働く上で健康障害を発症した際の基準となる時間です。しかし、大事なことは、長時間労働をせずにワークライフバランスを整えていくことです。

もし、健康を害しているようであれば、泣き寝入りをせず、過労死ラインを基準に労災と認定されないかを相談してみてください。長時間労働に悩んでいる方は、労働時間を少しでも減らすための手を打つことを考えて下さい。


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この記事の監修者
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤康二 弁護士 (第二東京弁護士会)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所を経て2014年8月にプラム綜合法律事務所を設立。企業法務から一般民事、刑事事件まで総合的なリーガルサービスを提供している。
編集部

本記事は労働問題弁護士ナビを運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※労働問題弁護士ナビに掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。  本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。
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