京都大iPS細胞研究所(京都市左京区)は、遺伝子の働きを調節する特定のリボ核酸(RNA)を用いた「人工回路」を作製し、がん化した細胞を死滅させる実験に成功したと発表した。こうした回路を組み合わせることで、がん化した細胞を除去する方法の開発などにつながる可能性があるという。
斉藤博英教授(生命工学)らの研究グループが開発。論文は4日、英科学誌「ネイチャー・バイオテクノロジー」の電子版に掲載された。
研究では、がん化した細胞を識別するRNAと、細胞死を引き起こすRNAの2種類を組み合わせて人工回路を作製。この回路をシャーレ上で子宮頸(けい)がんの細胞に加えると、約6割が死滅したという。
これまでデオキシリボ核酸(DNA)を用いた人工回路はあったが、DNAは細胞の核に投与する必要があり、遺伝子を傷つける可能性があった。RNAの回路は、核の周囲の細胞質で機能して速やかに分解されるため、安全で医療への応用に適しているという。また、人工多能性幹細胞(iPS細胞)を分化させる際に目的以外の細胞ができてしまう課題でも、こうした細胞を排除する方法を確立できる可能性がある。
斉藤教授は「今後は実際に目的の組織に人工回路を運ぶ方法などが課題になる」と話している。【川瀬慎一朗】
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