ディーゼル車の排ガス不正問題に揺れるドイツ自動車大手フォルクスワーゲン(VW)本社がある北部ウォルフスブルク。不正発覚から1カ月たった「城下町」では従業員らから「雇用がどうなるか分からない」などと会社の先行きに対する不安の声が相次いだ。市財政もVWからの税収に大きく依存し、市全体がVWと浮沈を共にしている。
中央駅で電車を降りると、大規模なVW工場が目に飛び込む。市の人口は約12万人。VWで働く人の数は周辺都市からの通勤組も含め7万人を超える。シフトの交代時間帯が近づくと、駅から工場ゲートへ人の流れが途切れることなく続く。
従業員のルイさん(41)は「問題発覚以降も現場の仕事に変化はないが、情報が乏しく心配。信頼回復に手間取れば、給料にも影響するだろう」と表情は暗い。VWで26年間働いてきたという技術者のカーステンさん(49)は「自信と誇りを持って車を造ってきた。早く顧客に安心してもらいたい」と言葉少なに語った。
一方、税収の半分以上をVWに頼る市は9月末、排ガス不正問題の行方を見極めるため、来年の予算の審議先送りを決めた。モールス市長は「大幅な法人税収減が見込まれる」と述べ、短期的には打撃が避けられないとの見方を示している。
市民からは「市とVW双方にとってかつてない危機。1年ほどで何とか過ぎ去ってほしい」「VWには高い技術力がある。コンプライアンス(法令順守)の徹底策を講じれば、絶対復活できる」と、祈りにも似た声も出ていた。(2015/10/16-16:32)
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