アウトドアブランド「ザ・ノース・フェイス(THE NORTH FACE)」が開発を進める、新製品のアウタージャケットに、いま世界のアパレル業界が注視している。史上初の試みとして同社が新素材に選んだのは、なんとクモの糸!
石油に頼らない次世代素材は“クモの糸”
現在、スポーツアパレルの多くは、ポリエステルやナイロンといった、石油を原料として製造された合成高分子材料を使用したウェアが主流だ。しかし、その製造過程においては、膨大なエネルギーを消費し、温室効果ガスを排出している側面がある。
自然のフィールドへ分け入り、オールラウンドに機能するはずのアウトドアウェアが、自然環境に負荷をかけてしまっていては…。このジレンマを解消すべく、石油に頼らず、環境負荷をかけない、サステイナブルな新素材開発が求められていた。そんな中で登場したのが、人工合成クモ糸素材だった。
脱石油製品の次世代素材として、アパレル業界を中心に注目を集めるのが、クモの糸の主成分となるタンパク質のフィブロイン。繊維を形成するタンパク質ベースの次世代バイオ素材として、持続可能な新素材の開発は、経済産業省はじめ、新エネルギー・産業技術総合開発機構が推進する、国家プロジェクトのひとつに指定されてきた経緯がある。
優れた柔軟性と強度鋼鉄の340倍のタフネス
世界で初めて、実際のアパレル工業ラインでの製造に成功した「スパイバー(Spiber)」は、バイオ分野のベンチャー企業だ。およそ11年に渡り、人工合成クモ素材「QMONOS(TM)」の開発を手がけてきた同社によれば、柔軟で強度のあるクモの糸は、鋼鉄の340倍の耐久性がある、世界で最もタフな繊維のひとつと言われているんだそう。
QMONOS(TM)は、微生物発酵によって原料となるタンパク質フィブロインを生成。それらを紡糸、加工することによってつくられた新世代素材は、まさしくTHE NORTH FACEが掲げる、「枯渇資源に頼らず自然環境を破壊しないものづくり」を具現化するものだった。
今回、THE NORTH FACEとスパイバーによる共同開発で誕生した「MOON PARKA(ムーン・パーカ)」は、既存製品のアンタークティカ・パーカのデザインをベースに作られた試作モデル。新素材の“クモの糸”は、ゴールドの表地とエンブレムの刺繍用に使用されている。
現在「MOON PARKA」は、2016年中の製品化に向けて開発を進めている。なお、10月10日〜2016年1月10日までの期間、全国のTHE NORTH FACE旗艦店で順次、一般公開される予定だ。
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