グーグルとNASAが研究を行っている量子コンピューター「D-Wave」が、従来型PCの1億倍の速度で「最適化問題」を解決したと発表された。
PHOTOGRAPHS COURTESY OF D-WAVE SYSTEMS
TEXT BY EMILY REYNOLDS
TRANSLATION BY MINORI YAGURA, HIROKO GOHARA/GALILEO
WIRED NEWS(UK)
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TRANSLATION BY MINORI YAGURA, HIROKO GOHARA/GALILEO
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グーグルと米航空宇宙局(NASA)が研究を行っている量子コンピューター「D-Wave」は、2O14年6月に行われた初期のテストでは、従来型コンピューターの性能に及ばなかった。だがグーグルはこのほど、D-Waveが、従来型デスクトップPCの10の8乗倍の性能を発揮したと発表した。言い換えれば、従来型コンピューターよりも1億倍高速ということだ。
「従来型コンピューターなら1万年かかることを、D-Waveは1秒で行う」。グーグルのエンジニアリング担当ディレクターであるハルトムート・ネヴェンは、テスト結果を発表する記者会見の席でこう述べた。
グーグルによれば、D-Waveは、シングル・プロセッサーの従来型コンピューターと、多くのタスクで「競争」し、すべてのケースで従来型コンピューターを上回った。グーグルは、研究論文のかたちでテスト結果を公表したが、論文の査読はまだ行われていない。
D-Waveには、グーグルやNASAのほか、マイクロソフトやIBMなども投資してきた。彼らがD-Waveに関心を抱いているのは、量子コンピューターが巨大なパワーを解き放つ可能性があるためだ。
量子力学は、物理学の基本法則が通用しないという奇妙な特徴をもつ。そのため、人工知能(AI)や材料科学分野における長年にわたる問題を解決する可能性があると期待されている。NASAの立場からすれば、D-Waveは、ロケットの打ち上げ予定の決定や宇宙飛行の複雑なシミュレーションに役立つ可能性がある。
従来型コンピューターは、0と1(「ビット」)から成るバイナリーコードでデータを符号化する。だが、量子コンピューターは、0と1および、そのふたつが組み合わさった「重ね合わせ」状態から成る亜原子粒子「量子ビット」を用いる。
3ビットは8つの値のどれかひとつを表すことができるのに対し、3量子ビットは、8つの値すべてを一度に表すことができる。そのため理論的には、量子コンピューターは従来型コンピューターよりもはるかに高速で稼働できる。
D-Waveは現在、カリフォルニア州にあるNASAのエイムズ研究センターに設置されており、「量子アニーラー」(Quantum Annealer)とも呼ばれている。「量子アニーリング」という理論に基づいており、「最適化問題」を解くためのアルゴリズムを用いている。
ただし、今回のテスト結果は、D-Waveにとって単純な勝利ではない。D-Waveは、従来型コンピューターと量子コンピューターの両方に提示された、特定の問題の解決用に特別に設計されており、明らかに有利な立場にあったからだ。
それに、こうした精度の高いエンジニアリングが行われていないマシンで実施されたこれまでのテストでは、従来型コンピューターと量子コンピューターとの間に有意な差は見られなかった。
グーグルは、ほかのかたちの量子ハードウェアにも取り組んでいる。そのなかには、アニーラーが解決するよう設定された最適化問題に限定されないハードウェアも含まれているという。
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