http://www.sankei.com/region/news/160224/rgn1602240008-n1.html
■入江康雄社長インタビュー
今後の躍進が期待されるベンチャー企業を表彰する「フクオカベンチャーマーケット」(主催、福岡県ベンチャービジネス支援協議会)の平成28年大賞に、竹炭などを利用して野菜や果物の鮮度を維持する装置を開発した「炭化」(佐賀市)が選ばれた。入江康雄社長(66)は「この技術で日本の農業を後押しする」と語った。
土木中心の建設業、竹中土木(東京)を定年まで勤めた後、24年に佐賀市で起業しました。7歳上の兄が、佐賀に多い放置竹林を何とかできないかと思ったのがきっかけです。
竹、特に竹炭は表面に微細な穴がたくさん開いています。この穴に、においの元となる物質を吸着する優れものなのです。
野菜や果物の鮮度維持にも使えないかと思い、まずは1年間、竹炭作りに励みました。アイデアを毎日、ノートに書き留めました。
佐賀県茶業試験場(嬉野市)に、技術指導をお願いしました。嬉野茶から抽出した高濃度カテキンを、粉末状にした竹炭と混ぜたのです。
その結果、嫌なにおいの元となるアンモニアや、果実の成熟・老化を促進するエチレンを吸収することができました。
県窯業技術センター(有田町)が持つ酸化チタンを使った「光触媒」という技術も応用し、鮮度保持装置を開発しました。ステンレス製で、縦15センチ、横85センチ、奥行き10センチの直方体です。
これを野菜や果物を運ぶコンテナに入れると、野菜の鮮度を保つことができる。実証実験では、ベビーリーフが2週間、変色しませんでした。
コンテナにひとたび装置を1台(35万円)取り付けると、乾電池2~4本もあれば、20日間は動きます。ランニングコストもかかりません。しかも、日持ちする期間が違う野菜や花を、一緒に運べる。
開発は2年間かかり、何度も会社はつぶれそうになりました。それでも、この装置によって、九州から首都圏に大型トラックで野菜を輸送する際も、余裕をもった日程を組めるようになりました。昨年秋から、日本通運が12台のトラックで、採用しています。
この技術は、海外への輸出にも強みを発揮します。新鮮さが重要な野菜や果物はこれまで、空路で運んでいました。装置を使うことで、割安な船便で運べるようになったのです。
26年に、日本からシンガポールや香港まで輸送する実証実験をしました。いずれも成功でした。
今後、コンテナ船の運航会社に働きかけます。37年に売上高10億円の目標を立てました。
環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)が発効すれば、九州産の野菜や果物の輸出が活発になることは間違いありません。
私どもの鮮度保持装置で、九州や日本の農業をしっかり後押しします。
◇
「炭化」をはじめ、フクオカベンチャーマーケットの受賞企業などが独自技術や商品を紹介する展示会「九州・山口ベンチャーマーケット」が23日、ホテルオークラ福岡(福岡市博多区)で開かれた。(村上智博)
0 件のコメント:
コメントを投稿