【テヘラン田中龍士】イランの首都テヘランのイラン人宅で今年4月に開かれたパーティーを治安当局が強制捜査した際に、出席していた小林弘裕駐イラン大使(61)が一時、身柄を拘束され、事情聴取を受けていたことが毎日新聞の取材でわかった。国際条約が定める「外交特権」は、外交官の身体などを「不可侵」としており、捜査は異例だ。小林大使によると、「大使に対する扱いとして不適切で、イラン外務省に抗議した」という。
保守的なイスラム教シーア派政権が統治するイランでは、昨年の米欧諸国などとの核合意を受けて経済制裁が解除されたことで、保守系組織を中心に外国文化流入への警戒感が強まっている。今回の強制捜査は、こうした状況を背景にした摘発強化の一環だった可能性もある。
複数の関係者らによると、小林大使は4月28日午後7時からテヘラン西部で開かれた夕食会に夫人と出席した。主催者は歴代の日本大使とも交流があるイラン人で、外国外交官ら約30人を招待。食事や酒が提供された。
この会場を治安当局者約10人が強制捜査。出席者に携帯電話の使用と外出を禁じた。小林大使はイラン外務省発行の「外交官カード」と呼ばれる顔写真付き身分証を携帯しておらず、名刺を差し出し身分を明かした。だが、退出は許されず、捜査を拒否できなかった。大使ナンバーを付けた公用車も捜索された。オーストラリア大使も外交官カードを持っておらず、取り調べを受けた。一方、フランス外交官は外交官カードを示して退出が許可された。
小林大使は、拘束されたのは「1時間くらい」と説明。「カードの不携帯が拘束につながったとは考えない」と話した。
日本大使館の抗議にイラン外務省から具体的な回答はなく、治安当局者の所属や捜査目的も不明という。毎日新聞の問い合わせにイラン外務省からは20日時点で回答がない。イランでは7月、イスラム指導体制に忠実な民兵組織「バシジ」が民家に設置された衛星放送機材10万個を押収したと公表している。
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