From L'OBS(France) ロプス(フランス)
Text by Prune Antoine
Text by Prune Antoine
アマゾンのようなECサイトでも、出会い系アプリでも、野菜の配達サービスでも、何でもあり。成功したビジネスモデルをそっくりコピペして、まだローンチされていない国で創業させる──。こんな企業が、ドイツで異様な急成長を遂げている。
最も大事なのは「効率」
ドイツの企業「ロケット・インターネット」は、創業から10年も経たずして、ネットビジネスの世界的巨人となった。同社は毀誉褒貶が激しいものの、はなはだ強力な戦略をとっている。既存のITビジネスをコピー&ペーストして、そういうサービスがまだ存在していない市場で立ち上げるのである。
「私たちの赤ん坊が生まれるのは、あそこにある仕事部屋です」
19世紀に建てられた工業ビルの6階を指差して、ヨハネス・ブルーダーが言った。ブルーダーはさしずめ父親というところか。
ブルーダーは40代で、カラフルなバスケットシューズを履いている。グーグルの元社員で、現在はロケット・インターネットの最高執行責任者(COO)を務めている。
ここはベルリンの中心部、目の前に建っているのはロケット社のオフィスビルだ。もっとも同社は目下のところ新しいビルを建設中で、完成すれば、チェックポイント・チャーリー(旧東西ドイツの国境検問所)を見下ろすオフィスに引っ越すことになる。
ブルーダーはこれから駆け足で、それも半時間足らずで、社内を案内してくれることになっていた。ロケット社は、ヨーロッパNo.1のネットビジネスのインキュベーターだ。ここで一番大切にされるのは効率で、楽しむことではない。
ブルーダーのいうかわいい赤ん坊とは、生鮮食料品の配達サービスの「ハローフレッシュ(HelloFlesh)」や、介護市場をリードする「ヘルプリング(Helpling)」などのスタートアップ企業のことだ。ロケット社は「新たな企業を創造する工場」なのである。
ブルーダーが説明する。
「製造業からヒントを得て、私たちは細かい点にまで心を配っています。私たちの会社はグローバル企業であると同時に、ドイツの企業でもあるのです」
ロケット社は「IT業界のポルシェ」を自負している。同社はまた、秘密主義に徹し、情報の漏洩を厳しく管理していることでも知られている。その上で、次から次と新時代の優良企業を生んでいるという伝説を作り上げてきた。
200以上のスタートアップをローンチ
マルク、オリバー、アレクサンダーのザンバー3兄弟によって2007年に共同設立されたロボット社は、わずか10年も経たないうちに、ヨーロッパのハイテク業界の有力企業となった。
同社は投資ファンドと企業アクセラレーターの両方の性格を兼ね備え、2014年以来、200社以上の企業を立ち上げてきた。110ヵ国以上に進出し、世界で3万6000人を雇用している。
そこには「資本主義3.0」の奇跡の成功の法則があるのだろうか。
いや、そんな誇らしげなものはない。サイトのコピーを作る、それを新たな国で展開する、そのあと事業を大金で売る。したがって、明日の世界を創造しているわけではない、複製を作っているだけなのだ。
「ネットの世界でもっとも攻撃的な男」と自称するオリバー・ザンバーが起業したのは、1999年のことだった。当時のオリバーはビジネススクールを出たてで、シリコンバレーに憧れていた。
オリバーが最初に作ったクローン企業は「アランド(Alando)」。米国の巨大ネットオークション企業「イーベイ」のドイツ版だ。イーベイは、のちにドイツ市場に進出するために、アランドを4300万ユーロ(約51億円)で買収するハメになった。
そのあと、オリバーはペースを加速した。レプリカ企業が次々とオリバーの会社から生まれたのだ。
「Airbnb」のクローンは「ウィムドゥ(Wimdu)」、「Amazon.com」のクローンは「ラザダ(Lazada)」だし、クーポンサイト「グルーポン」のクローンは「シティディール(CityDeal)」だ。出会い系サイト「ミィーティック」は「イーダーリング(eDarling)」に化けた。こうしたクローン企業は数十社に及ぶ。
一番の成功は「ザランド(Zalando)」だろう。米国の「ザッポス」を真似た靴やアパレルのネット通販企業で、年間売上高22億ユーロ(約2600億円)に達し、フランクフルト証券取引所での評価額は89億ユーロ(約1兆円)だ。
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