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2018年3月16日金曜日

【社説】働き方改革関連法案 脱「過労死」を見失うな

勉強の為に転載しました。
https://www.google.co.jp/amp/s/this.kiji.is/342457346444428385/amp

労働時間調査の不適切なデータが明るみに出て、政府は働き方改革関連法案から裁量労働制の適用拡大を削除し、実態把握からやり直すことを決めた。
 8本もの法案を束ねた関連法案は「ガラス細工」とも評されてきた。労使双方の利害が複雑に絡み合い、何とか成り立っているからだろう。
 裁量労働制の拡大は、残業の上限規制や高収入の一部専門職を労働時間規制から外す高度プロフェッショナル制度(高プロ)、同一労働同一賃金と並ぶ4本柱だった。その重要な1本が抜けたとすれば当然、関連法案そのものがぐらつく。制度設計について、一から議論をやり直すのが筋ではないか。
 政府は、これまで裁量制による労働時間の縮減効果を盛んに強調してきた。それを支えるはずの根拠が崩れたのだから今回の削除は理の当然だが、問題はそれにとどまらない。
 例えば、残業時間の上限規制で、建設業は施行後5年間の猶予があるものの、2020年には東京五輪・パラリンピックを控えている。労働環境が一層深刻になるのは火を見るよりも明らかで、過重労働や過労死をもたらしかねない。
 同一労働同一賃金でも、中小企業に限って適用を遅らせる修正案が先ごろ、厚生労働省から自民党に提示された。また、高プロでは、影響がどれくらいの労働者に及ぶのかさえ、今なおはっきりしていない。
 こうした大小の疑問や論点について、衆院予算委員会で議論が深まらなかったのは残念でならない。今後、厚生労働委員会など両院で審議が尽くされるのか、疑念が拭えない。
 法案を抱き合わせにする方式そのものに、やはり無理があるのではないか。労働環境の改善につながる規制のブレーキと、規制緩和のアクセルを同時に踏もうとするやり方には、野党や労働界から強い批判や異論が挙がっている。
 安倍晋三首相は第1次政権の際に、高プロの原形ともいえるホワイトカラー・エグゼンプションの提案で痛い目に遭っている。「残業代ゼロ法案」「過労死促進法」といった世間の批判を招き、政権が崩壊する一因にもなった。
 そんな経験から、労働界との真っ向対立だけでは押し切れないと考えたのかもしれない。今回は、労働側にも利点となる部分を取り混ぜ、セットで法案をまとめ上げてきた。
 裁量労働制の切り離しに続き、高プロの断念も迫る野党の質問に対し、安倍首相は「連合の意見も取り入れた」と答弁。これ以上は譲らないと突っぱねている。高プロは、経団連をはじめとする使用者側にとって利点に他ならないからだ。
 ただ、労働基準法には、使用者の意に沿った長時間労働を許さぬことで、他の労働者たちの最低限の労働条件を守る側面がある、とみる労働法の専門家もいる。高プロは労基法に穴をあけ、過労死への道を開く―。そう映るからこそ、過労で家族に先立たれた遺族たちは撤回を訴えているのだろう。
 過労死をなくすには、何が必要かという原点を見失ってはなるまい。生産性に主眼を置く「働かせ方」改革ではなく、命や人権に重きを置く「働き方」改革を目指すべきである。

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