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V言語 ー RustとGoのいいとこ取りで、GCなし言語の新星
シンプルさ・高速さが魅力
V言語の最大の特徴はシンプルさと高速さ。C言語並みに高速で、かつ省メモリ・小サイズというのはかなり期待が持てる。(追記: 実際のベンチマーク速度は、確かに高速だが、RustやNimほどではなさそう。)
細かな文法については以下が詳しい。
Rustをよりシンプルにした代替言語となるか?
Rust言語は非常に立ち位置がScalaに似ていて、記述力と生産性が非常に高い言語である一方で、概念が多く、学習コストが非常に高い。一方のV言語は、まさにKotlinのようにシンプルで、それでいて今までの言語の良さを継承していて使い勝手が良い。
言語としての構文要素や概念が少ないので、シンプルすぎじゃないかと思うくらいだけど、ぱっと見た感じではよく設計されていて、過不足はなさそう。(Optionの
?
の扱いとかはKotlin風で、あとはGoとRustの影響が大きい。)
まだまだアーリーステージの言語なので、代替言語となり得るかは、これからに期待。
余談だけれど、自分は何度かNim言語に触っては結局使うことがなかった経緯があって、結局Rustに落ち着いているのは、やっぱりGCがないのが大きい。Nim言語は可読性と動作速度は非常に魅力だけれど、やはりGCがついている言語というのは、C/C++に慣れていると何かと導入のネックになりやすい。
その点、V言語ははじめからGCを前提としない独自のメモリ管理をうたっているので、もし実際にGCなしでメモリ管理がうまくできるのであれば、とても期待が持てる。(追記: メモリ管理は開発途上で今後に期待。詳しくは末尾の追記参照。)
高速なコンパイルと高い可読性
まだ本当に初見だけれど、参考記事をいくつか眺めている感じでは、V言語の特徴はやはり高い可読性と、高速なコンパイル速度にあると思う。
例えばRust言語は、可読性は慣れると高い方だが、慣れないと読みづらく、難易度が高い。一方でV言語は、可読性が非常に高く、何より難易度が低い。One way to do somethingを掲げているだけあって、ループ構造がforしかないなど、誰が書いてもシンプルになるのはPythonに似ている気がする。
あと個人的には生成されたバイナリサイズが小さいのも魅力だと感じていて、このあたりも非常にKotlinの特徴と似ている気がする。
もっと言語として完成度が上がってくれば、このあたりの魅力が非常に強みになる言語だと思う。
まだドキュメントが不十分
早速使ってみたい感じはすごくする一方で、まだ公開されて日が浅く、ドキュメントがあまり充実していない。
特に気になるメモリ管理の部分もまだドキュメントが整備されておらず、詳細を確認するにはGitHubを追っていくしかない模様(誰か英語で記事書いてたりするかも?)。
導入実績も非常に少ないので、まだ実践で使うには情報があまりに少ないという印象だけれど、RustやZigに次ぐGCのない言語として、期待大。
V言語のメモリ管理周りは特に気になるので、今後追記していきたい。
追記: メモリ管理周りはまだまだ開発段階
特に、Hello Worldでメモリリークが検出されるなど、2020年2月時点ではまだまだメモリリークに関する問題点は多い。それらの多くについては、コンパイル時にASTを分析することで自動的に最適化しようと計画されているようだが(一部実装されているらしい)、既存のアルゴリズムの使用が予定されていて、Rustのように新規のメモリ管理の仕組みが存在するわけではなさそう。
V言語フォーラムのメモリ管理についてのスレッドでも議論が交わされているが、そのコンパイル時のアルゴリズムもまだまだ選定段階・実験段階のようで、この議論などを見る感じでは、まだまだV言語はアーリーステージで、実際のプロダクトに利用できるのはかなり先になりそうな印象。(ただ逆に、メモリ管理まわりの実装さえ進めば、ぐんと実用的になりそうな予感もする。)
ちなみにV言語の更新頻度は、公開当初に比べると少し落ちていて、まだ導入事例や企業のバックアップなどもないようなので、これからどの程度コミットが続いていくかに期待したい。
https://blog.minami14.dev/?p=51
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The V Programming Language を試す
Vは2019年6月にOSSとして公開されたばかりのシンプルで読みやすく、メンテナンスしやすい言語です。
現在はCに依存していますが今月中(2020年1月)には直接ネイティブのバイナリを出せるようになるようです。
GCはありませんがRustのようにコンパイル時に自動的に解放するタイミングを決定しているので、メモリリークや二重解放の問題がなく実行時にGCの負荷が掛かりません。
Goに似たシンプルな言語でVを書くのに必要なことを覚えるのに時間は掛かりません。
Goを書いたことある方であれば公式のドキュメントを少し見ただけで書けると思います。
試しにechoサーバとクライアントを書いてみました。
私がGoを主に使用しているということとVがGoに似ているということから、Goと比較しながら見ていきます。
server.v
module main import net fn main() { sock := net.listen(1234)? for { s := sock.accept() or { println(err) continue } go serve(s) } } fn serve(sock net.Socket) { buf, n := s.recv(1024) line := tos(buf, n) println(line) s.send(buf, n) or { println(err) } }
エラーハンドリングのやり方が違ったりしますが基本的にはGoと同じような感じですね。
Goの
package
がVではmodule
になっています。import
は"net"
のようにダブルクォーテーションで囲む必要はありません。
関数は
func
ではなくfn
です。
今回は再代入を行っていませんが、Vの変数はデフォルトでイミュータブルです。
再代入する場合には
mut x = 1
のようにmut
を付ける必要があります。sock := net.listen(1234)?
これは以下と同じ意味です
sock := net.listen(1234) or {
panic(err)
}
Goだと
sock
とerr
を返してif err!=nil
でエラーハンドリングしますが、Vではエラーを返す関数を呼ぶときに結果とerr
を合わせて返すのではなく結果かerrのどちらかを返します。err
が帰った場合にはor
でエラーハンドリングをします。
main関数内では
or { panic(err) }
の代わりに?
が使えます。
以下はerrを返す関数の例です。Goと違ってifが式になっています。
fn foo(x int) int? {
return if x > 0 {
x
}
else {
error('x is negative')
}
}
forループはGoと同じです
for {
s := sock.accept() or {
println(err)
continue
}
go serve(s)
}
並列処理はGoと同じように
go serve(s)
と書けますが、現在は新たにスレッドを作成して実行するようになっています。
コルーチンとスケジューラは近いうちに実装される予定です。
Vはリリースされたばかりの言語で情報が少なかったのですが、シンタックスがGoに似ていてシンプルで読みやすい言語なので、標準モジュールのソースを見ながらechoサーバ、クライアントを実装することは簡単にできました。