2025年4月27日日曜日

SF映画のような世界が実現する?! 量子コンピュータの完成で叶う驚きの未来についてNTTの研究者に聞いてみた。 2025年4月24日 & ついに量子コンピュータでLLMの追加学習に成功。 量子コンピュータとテンソルネットワークが LLM計算を変える。 yuichiro_minato2 Yuichiro Minato 2025/04/20 & blueqatでは、量子技術をGPUに応用した独自生成AIのLLM(大規模言語モデル)の開発を行います。 & 半導体量子コンピュータの量産化が始動――低価格・小型筐体で普及加速へ



https://group.ntt/jp/magazine/blog/quantum_00/

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関連情報:

https://neovisionconsulting.blogspot.com/2025/04/llmllm-yuichirominato2-yuichiro-minato.html

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ついに量子コンピュータでLLMの追加学習に成功。
量子コンピュータとテンソルネットワークが
LLM計算を変える。 yuichiro_minato2 Yuichiro Minato 
2025/04/20

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https://blueqat.com/yuichiro_minato2/140c0fa2-6c57-4fc0-aad3-8578ecf51bdf


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blueqatでは、量子技術をGPUに応用した独自生成AIのLLM(大規模言語モデル)の開発を行います。

yuichiro_minato2

Yuichiro Minato

2023/06/30 17:43

blueqatでは、量子技術を応用し、既存の深層学習のモデル改善を行い、自社独自のLLMモデルの開発をスタートします。

量子コンピュータの実用化はまだまだ未来の話と言われています。blueqatではかねてから普及にいそしんでいるNVIDIAの高性能量子コンピュータシミュレータのcuQuantumの技術を活用し、既存深層学習モデルの改善を行い、独自モデルの開発を進めます。

数年来blueqatではGPUと量子コンピュータをハイブリッドで利用する計算を開発して参りました。昨年よりGPUを活用し、テンソル分解などのパラメータ削減技術を利用し、既存深層学習モデルのパラメータ削減や高速化をクライアント様と進めてきており、実用的な良い結果を得られはじめています。

量子コンピュータの回路をディープラーニングと同じテンソルに変換した回路はとてもAIと相性がよく、技術を共通化できます。線形な計算の他、非線形の場合でも対応できることがあります。また、将来的に容易に量子回路にフィードバックが出来ます。

Transformerモデルなどでも世界で積極的にテンソル分解を通じたパラメータ圧縮が提案されており、パラメータによるスケール則を量子計算で効率的に実現できるかの良い開発となります。


https://blueqat.com/yuichiro_minato2/29605a88-4e77-461f-b755-cccedd0bdf91

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半導体量子コンピュータの量産化が始動――低価格・小型筐体で普及加速へ

yuichiro_minato2

Yuichiro Minato

2025/04/20 08:03

3

半導体量子コンピュータの量産化が始動――低価格・小型筐体で普及加速へ

次世代技術として注目される量子コンピュータの分野で、大きな進展があった。これまで研究用途や試作機が中心だった半導体量子コンピュータにおいて、ついに量産体制がスタートする。量産品のターゲットはデータセンターだ。

新たな量産モデルは、従来と比べて圧倒的に低価格かつコンパクトな筐体を実現。制御系の工夫や冷却装置の小型化により、これまで課題とされていたスペースと導入コストを大幅に削減した。

この進化により、研究機関や大手企業だけでなく、中小企業や教育機関、地方自治体などにも導入の選択肢が広がる。応用分野として機械学習、最適化、量子センシング、量子通信などが想定されている。

「量子コンピュータが身近な現実になるフェーズに入った」

今後はソフトウェアやクラウド連携との統合が進み、より多くの産業分野で実用化が加速することが期待されている。


<光量子コンピューター特集 全2回の第1部/第2部へ>

※ 本記事は、2025年2月27日 マイナビニュースに掲載された特集記事です。

みなさんは、「量子コンピュータ」と聞いてどんなものを想像しますか? おそらく「SF映画で出てきた未来のコンピュータ」、「よくわからないけれど、すごいことができそう」といったイメージを漠然と持っている方が多いのではないでしょうか。

現在、量子コンピュータは各国のテクノロジー企業によって研究が進められており、将来の完成が期待されています。そして、現在注目されているAIと同様に、社会を大きく進化させる可能性を秘めていることからビジネスパーソンが知っておきたい重要トピックです。

そもそも量子コンピュータとはどのようなコンピュータであり、私たちの生活にどのような豊かさをもたらすのか。今回、量子コンピュータの研究開発に携わるNTTグループの研究員の方々にお話を伺いました。

❇お話を伺った方々のプロフィール❇

  • NTT先端集積デバイス研究所 准特別研究員
    柏﨑貴大さん
  • NTT先端集積デバイス研究所 研究主任
    井上飛鳥さん
  • NTT 研究企画部門 担当部長
    白井大介さん
  • NTTコンピュータ&データサイエンス研究所 主席研究員
    寺本純司さん

そもそも量子コンピュータってどんなもの?


NTTの超高速光技術を活用した光量子コンピュータ向けデバイス(構成イメージ)

量子コンピュータとは、ざっくりとした言葉で表現すると「驚異的なスピードで計算(情報処理)を行うことができるコンピュータ」です。現在、世の中で使われている一般的なコンピュータの中でもトップの性能を持つ「スーパーコンピュータ」が10万年かけて解ける問題を、量子コンピュータは一瞬で解ける可能性があるそう。では、なぜそのようなスピードで計算できるのでしょうか。

「一般的なコンピュータは物理学用語でいう『古典力学』という現象を利用して動いています。古典力学とは、ボールを投げたら落ちるとか、壁に当たると跳ね返るといった、昔からよく知られている物理学のことです。一方で量子コンピュータは『量子力学』という仕組みで動作するコンピュータです」とNTT先端集積デバイス研究所の柏﨑貴大さんは説明してくれました。

量子力学は、100年ほど前に物理学者のアルベルト・アインシュタインをはじめとする多くの研究者が体系化した考え方で、物質を構成している「粒」をどんどん小さくしていったときに「波」のように振舞ったり、光などの「波」が「粒」のように振舞ったりする現象を見つけたのがはじまりと言われています。それは、古典力学では説明のつかない現象で、新しい物理学の領域として量子力学が始まったのだとか。


量子力学について語る柏﨑貴大さん

そして、「古典力学」と「量子力学」では情報の扱い方が異なるそう。

NTT先端集積デバイス研究所の井上飛鳥さんは、「『古典力学』を用いたコンピュータは『0』と『1』で情報を取り扱います。例えば、たくさんデータがある中から特定のデータを見つけ出す計算を行う際は『00000』をチェック、それが違ったら次は『00001』をチェック、それも違ったら次は『00010』......というふうに繰り返し計算を行っていきます。一方、『量子力学』を用いたコンピュータは『0』と『1』を重ね合わせた状態を定義できる特長があり、計算を行う際、0かもしれないし1かもしれないという曖昧な状態のまま、一気に計算をすることができるのです」と解説しました。


「古典力学」と「量子力学」の情報の扱い方を語る井上飛鳥さん

実は、古典力学を活用した従来のコンピュータでは、性能向上に伴う消費電力の増加などエネルギー面の課題があるほか、計算速度がいずれ頭打ちすることがわかってきています。「0」と「1」を重ね合わせた状態で扱うことができる量子コンピュータは、そうした限界を超えることができるため、現在さまざまな業界や企業などから期待されているのです。

〈ポイントまとめ〉

  • 量子コンピュータとは驚異的なスピードで計算を行うことができるコンピュータ
  • 「0」と「1」を重ね合わせた量子状態を活用することで高速に計算できる

自動運転や金融まで! あらゆる社会問題を解決できる時代がやってくる⁈

量子コンピュータが実現すると私たちの生活はどのように変わっていくのでしょうか。

NTTコンピュータ&データサイエンス研究所の寺本純司さんは、特に「最適化問題」の分野で活かせると考えているそうです。

「例えば、自動運転が今よりも浸透した世の中で、刻一刻と変わる交通状況を反映した自動運転ルートを導き出し、渋滞の無い、都市全体で最適化された世界を作ることや、さまざまな角度から金融のポートフォリオ分析を行い、最適な金融商品の選択ができる未来が実現する可能性があります」(寺本さん)

画像:自動運転や金融まで! あらゆる社会問題を解決できる時代がやってくる⁈

また、研究企画部門の白井大介さんは創薬分野での活用も期待できると考えています。現在AIを用いて行われている化学物質の組み合わせのシミュレーションが、量子コンピュータを活用することでより一層早くなり、創薬の開発も飛躍的に早まる可能性があるそう。

「その他、遺伝子情報などを用いて一人ひとりに最適化された薬を作り出すことも可能性として考えられています。オーダーメイドのため副作用もなく、未知の病気を防ぐ薬なども作れるようになるかもしれません」と白井さん。

画像:自動運転や金融まで! あらゆる社会問題を解決できる時代がやってくる⁈

さらに、「まだ遠い未来ですが、世の中そのものをシミュレーションすることも可能かもしれません。例えば、地球の天候を完全に再現し、異常気象などが起きた際に原因を量子コンピュータで分析するといった活用も期待されています」と述べました。

さまざまな社会問題を解決できる可能性を秘めている量子コンピュータですが、現在は研究・開発の段階にあります。GoogleやIBMといった海外のテクノロジー企業や、NTTグループをはじめとした国内の企業・大学などが研究を進めており、現状では「従来のコンピュータだと膨大な時間がかかる問題を一瞬で解ける」ことを証明できた段階とのことです。

量子コンピュータ研究の現状とNTTの技術力

量子コンピュータの実用化にあたり障壁となっているのが「誤り訂正」です。「誤り訂正」とは、「ノイズを検知して除去し、正解(理論的に可能な状態)に近づけること」をいいます。

柏﨑さんは、「量子はとても壊れやすく不安定です。そのため、現状の量子コンピュータは計算結果にノイズが入ってきてしまい、完全な正解ではなく、大まかに『このへんが正解だろう』という結果しか得られません。このノイズをどう除去するかに各社苦心しています」と解説してくれました。

現在開発が進んでいる量子コンピュータは、光や超伝導などを利用して「量子状態」を作り出し計算を行うそう。その中で、NTTでは「光量子コンピュータ」という光の波に情報をのせて処理を行う光通信の技術を使った量子コンピュータの研究を進めています。

超伝導方式で量子状態を保つには、絶対零度に限りなく近い温度にまで冷やす必要があり、大量の電力を必要とする大きな冷凍機がないと動かすことが出来ません。しかし、光量子コンピュータの場合、室温でも光量子が高速で飛び、光同士で量子もつれ状態を作るため冷凍機は必要なく、熱や気圧に対して強いという特長があります。この点から、光量子が大規模化や高速化の実現に近いとも言われており、光通信のノウハウをもつNTTでは、これまで開発してきた技術を活用しながら、光損失の少ない安定した光量子を生み出せるよう研究を進めているそうです。

〈量子もつれとは?〉

古典力学では説明できない現象で、2つ以上の量子が強い相関関係にあることをいいます。この量子もつれは、量子計算や量子通信などさまざまな量子技術のリソースとなり、セキュリティや次世代の量子ネットワークの基盤技術としての応用も期待されています。

画像:NTTが開発した量子光源モジュールNTTが開発した量子光源モジュール

画像:NTTが開発した光量子コンピュータの心臓部「量子光源」のデモンストレーションNTTが開発した光量子コンピュータの心臓部「量子光源」のデモンストレーション

そうした長年の研究が功を奏しNTTは、東京大学(東大)や理化学研究所(理研)と共同で、量子コンピュータの1号機を2024年11月8日にローンチ。その中でもNTTは特に、古典的な光から量子的な光を生み出し、また量子的な光から古典的な光へ変換することができる、高性能な「光パラメトリック増幅器」を開発しました。また、最新の結果では、量子もつれ状態の生成に関して従来よりも1,000倍以上高速化することに大きく貢献し、量子コンピュータ自身の高速化の可能性を示すことができたとしています。

量子コンピュータはいずれ社会のインフラとして定着していく

量子コンピュータ完成に向け、NTTグループではどのように未来を見据えているのでしょうか。

「よく量子コンピュータが完成する目処として2050年が挙げられますが、何を持って完成とするかというと、『誤り訂正ができて汎用的かつ大規模な量子コンピュータ』ができたときだと考えています。その実現には、光量子コンピュータ向けの光デバイスの性能向上が必要不可欠です」と語る井上さん。

「その中で光損失をできるだけ抑え、古典力学コンピュータのメモリに相当する『量子ビット数(量子の数)』をいかに増やせるデバイスを開発できるか。つまり、どれだけの情報を扱えるかが今後の研究テーマのひとつだと考えています」と柏﨑さん。

NTTが掲げるロードマップ

具体的なロードマップとしては、同社がこれまで行ってきたビジネスとの親和性が高い「光の技術」を活用した量子コンピュータの実現を目指していき、2030年頃には実社会の役に立つ量子コンピュータの開発を実現させたいとしています。

そんな量子コンピュータについて井上さんは、「一家に一台のような存在ではなく、社会全体を支えるインフラのような使われ方をするのではないかと考えています。いつのまにか社会全体が量子コンピュータの恩恵を受けているような、そんな世の中がいつか来るのではないでしょうか」と語ってくれました。



社会を大きく変えるとされる量子コンピュータ。かつてはSF映画のように荒唐無稽な存在でしたが、技術の発展により実現が期待されるまでになっています。NTTは昨年、東大や理研と一緒に光量子コンピュータの1号機をローンチするなど、まさに量子コンピュータ研究で世界の最先端を行く存在。いつのまにか私たちの社会のインフラに量子コンピュータが取り入れられ、その恩恵を自然と受けられる日がいずれ来るのかもしれません。

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PART2.

2025年4月24日

世界トップレベルを誇るNTTの光通信技術が量子コンピュータの世界に進化をもたらす

<光量子コンピューター特集 全2回の第2部/第1部へ>

※ 本記事は、2025年2月28日 日経クロステックに掲載された特集記事です。

これまでできなかった計算ができるという期待から、世界中で開発競争が加熱している量子コンピュータの世界で、日本が画期的な進化を遂げたことが発表された。日本電信電話(以下、NTT)、東京大学、理化学研究所などの技術を結集し、光量子コンピューティングを実行するプラットフォームを実現、さらに、量子コンピュータ実現の鍵となる"量子もつれ"を従来の1000倍上の速さで生成する技術を実現した。いま、量子コンピュータの世界で何が起きているのか、それがどんなインパクトを持つのか、研究者たちに話を聞いた。

量子の実用化を加速する光量子計算プラットフォームの開発

量子コンピュータは、量子力学の理論を応用した全く新しいコンピュータだ。これまでのコンピュータとは一線を画すもので、開発者たちは、これまでのコンピュータを"古典コンピュータ"と呼ぶ。
 量子コンピュータは量子と呼ばれる物理的な媒体に情報を載せて、"量子重ね合わせ"と"量子もつれ"という量子の状態を使うことで古典コンピュータにはできない計算を実現する。"量子重ね合わせ"により複数の量子状態を同時に存在させて、さらにそれらが相互に関係した"量子もつれ"状態に操作を加えることで、古典コンピュータでは逐次操作が必要な演算を一度に実行させることが可能となる。コンピュータの処理能力を高めるための並列処理を飛躍的に進化させるものだ。

画像:NTTが開発した光量子コンピュータの心臓部「量子光源」のデモンストレーション。室温で安定して量子状態が実現されている。NTTが開発した光量子コンピュータの心臓部「量子光源」のデモンストレーション。
室温で安定して量子状態が実現されている。

量子コンピュータを実現するにはいくつかのアプローチが存在する。超伝導回路、中性原子などだ。超伝導回路は極低温で抵抗がゼロの電気回路中の電流を利用し、中性原子はレーザー冷却された原子を利用する。すでにいくつかの量子コンピュータが開発されているが、実用化に向けては多くの課題が残されている。それらの中でいま、最も有望な候補と目されているのが、光を利用した光方式の量子コンピュータ、光量子コンピュータだ。
 NTT先端集積デバイス研究所上席特別研究員の橋本俊和氏は「光方式は光のパルスを使って時間分割多重化し、パルス間の相互関係で計算を行うもので、量子コンピュータの計算のもとになる量子ビットに相当するものを無制限に配置できます。しかも、室温で稼働させることができるので、大掛かりな冷却装置が不要でスペースをとりません」とメリットを語る。

画像:NTT先端集積デバイス研究所上席特別研究員橋本 俊和(はしもと・としかず)氏NTT先端集積デバイス研究所
上席特別研究員
橋本 俊和(はしもと・としかず)氏

NTTがいま取り組んでいる光方式の研究開発を始めたのは2015年である。 世界で初めて完全な形で量子テレポーテーションを実現し光量子コンピュータの研究を進めてきた東京大学の古澤明教授の研究に加わって実用化に向けた開発が始まった。この光量子コンピュータの開発プロジェクトチームは、2024年11月8日、世界で初の汎用型光量子計算プラットフォームを始動させた。さらに、同チームは2025年1月17日、万能な量子計算に必須の非線形操作などのもとになる世界初となる量子性の強い光パルスを量子コンピュータに適用、同1月29日、従来の1000倍以上高速なリアルタイムな光量子もつれ生成など、矢継ぎ早に革新的な光量子コンピューティング技術を生み出し、いまも世界初・世界最高性能の挑戦を続けている。
 これを可能にしたのが、NTTの光通信の研究開発の中で培った特殊なデバイス技術だ。

画像:NTTが開発した量子光源モジュールで、量子光源や広帯域の光アンプ技術として量子コンピューティングにおいて中心的な役割を担っている。NTTが開発した量子光源モジュールで、
量子光源や広帯域の光アンプ技術として量子コンピューティングにおいて中心的な役割を担っている。

光の通り道を磨き上げて量子ビットの安定供給を

超伝導や中性原子を用いた量子コンピュータでは量子ビットを担う超伝導量子ビット回路や中性原子を並べる必要があるため、実現可能な量子ビット数はそれらを並べられるチップサイズや空間の広さによって制限を受ける。現在、実現されているものは1000量子ビット程度であるが、そのままの技術を延長して規模を拡大するのには限界が近づきつつある。橋本氏は「価値の高い一般的な量子計算を行うためには100万量子ビット程度が必要といわれている。現状の量子コンピュータの規模ではまだまだ不十分」だと指摘する。現在の1000倍のスケールだ。
 量子ビットを空間的に並べるタイプの場合、いまの技術で1000倍を実現しようとすると、大掛かりな冷却装置や制御装置を1000台つなぎ合わせてシステムを構成する必要があるため、物理的に広いスペースや大規模な設備が必要になり、消費される電力も膨大なものになる。なにより、量子的な状態をつなぎ合わせるにはノイズを抑制して量子的な状態を正しく伝えるための大がかりな装置が必要となり、技術的に相当な困難が予想される。
 それに対して、光パルスで量子状態を実現して時間領域に光パルスを並べる光方式であれば、空間的な広さの制限を受けないので、無制限にスケールすることが可能だ。NTTの研究開発マーケティング本部研究企画部門担当部長の白井大介氏は「超伝導など他の方式よりも先に100万量子ビットに到達できる可能性があります」と光方式に注力する理由を語る。
 しかし、当然、難しさもある。NTT先端集積デバイス研究所特別研究員の梅木毅伺氏は「光量子コンピュータの最大の課題は高品質なスクイーズド光の実現であり、それを作り出す光デバイス技術が光量子コンピュータを実現する上で鍵となります。スクイーズド光作り出す量子光源モジュールの中には光のチップが入っています。光の通り道をチップ上に作り込んでレーザー光からスクイーズド光を発生させますが、その光の通り道をどれだけ精度よく作るかという微細加工技術が重要です。我々はそれを追求し、どこにも負けない技術を実現していると自負しています」と語る。スクイーズド光とは、量子性を持った光のこと。NTTは効率のよいニオブ酸リチウムという物質を使い、さらに髪の毛の太さの10分の1程度の細長い通り道に加工して、そこに光を閉じ込め強い相互作用を発生させる技術を開発。世界最高性能を誇る量子光源モジュールを実現している。

NTT先端集積デバイス研究所
特別研究員
梅木 毅伺(うめき・たけし)氏

研究開発マーケティング本部
研究企画部門
担当部長
白井 大介(しらい・だいすけ)氏

この技術の背景にあるのが、NTTの持つ高度な光通信技術だ。大陸間をつなぐ海底ケーブルから家庭に引き込まれる光ファイバー通信まで、NTTではさまざまな光通信を実現してきた。いまNTTは最先端の光技術を使って、豊かな社会を創る「IOWN構想」を強力に推進している。今回発表された量子光源モジュールもNTTの光通信用の光増幅器技術として生み出され、その特性を極限まで高めてきたものを、量子光源技術に発展させたものである。NTTコンピュータ&データサイエンス研究所主席研究員の寺本純司氏は「真に意味のある計算をするには量子ビットの数を増やさなければなりません。そこにこれまで培ってきたデバイスの光回路の技術が生かされています。一方で、ハードウェアを使って有用な計算を実行させる必要もあります。NTTグループの強みはハードウェアからソフトウェア、ユースケースまで、一気通貫で量子コンピュータの能力を提供できることです」と話す。

画像:NTTコンピュータ&データサイエンス研究所主席研究員寺本 純司(てらもと・じゅんじ)氏NTTコンピュータ&データサイエンス研究所
主席研究員
寺本 純司(てらもと・じゅんじ)氏

大規模計算が可能になって実用化への道が開かれた

今回、開発された高機能な汎用型光量子計算プラットフォームにより光量子コンピュータの実現に向けた大きな一歩を踏み出すことができた。さらにクラウド経由でも利用することができるという。
 橋本氏は「実際に使うことができる光量子計算プラットフォームができましたが、現在は簡単な計算しかできません。今後は、非線形演算や誤り訂正などの機能を付加し、汎用的な大規模計算ができるようにしていきます。併せて、光量子計算プラットフォームという実物があるので、それを求心力に、今後は量子計算に対するニーズがあるユーザーとの議論や連携が進められれば」と実用化にむけた向けた取り組みが加速することを期待する。
 量子コンピュータの適用が最も期待できるのは、創薬や素材など化学の分野だ。圧倒的な計算速度が実現されることで、個々人に合わせた副作用の少ない薬の実現や、新たな分子の組み合わせによる新素材の合成など、可能性が大きく広がる。「量子コンピュータは古典コンピュータでは解けない課題を提供するアクセラレータ的な存在です。問題を解くためのソフトウェアと性能を高めるデバイスを開発するとともに、IOWNと接続するための仕組みを整えていきたい。グループの力を集約して、社会の課題解決に貢献していきます」と白井氏。今後のNTTグループとしてさらなる広がりが期待される。

関連リンク

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光量子状態の高速生成――光通信技術による光量子コンピュータの加速(2024年11月1日)
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