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2014年7月5日土曜日

ツムラの漢方薬作り [Part3] 漢方の「効き方」は?

引用元URL:https://globe.asahi.com/feature/110515/04_3.html



日中韓、それぞれの漢方





[Part3] 漢方の「効き方」は?


体質や症状重視。「科学的根拠」は途上



小寺浩之氏撮影

日本の医療現場で、漢方はどのぐらい使われているのだろうか。



詳しい統計はないが、日本漢方生薬製剤協会が2008年に医師約700人を対象に実施したインターネット調査では、8割以上が漢方を処方しているという結果だった。


風邪や便秘、不定愁訴など、西洋医学では治しにくい病気に使うとの答えが多かった。



公的医療保険の適用を受ける漢方は148品目あり、35年前に比べ約3倍に増えた。01年に医学部のコアカリキュラムに漢方医学が盛り込まれたことも、処方拡大の後押しをしている。



西洋医学は病名を重視するのに対し、漢方を始めとする東洋医学では体質や症状を重んじる。病気の治し方のアプローチが違うため、得意分野も異なり、症状に応じて使い分けられている。



例えば「がん」の治療は、西洋医学で対処するのがふつうだ。X線やCTなどの機器で、がんを見つけ、腫瘍(しゅよう)部分を手術で切る。


がん細胞が周りにも広がっていれば、抗がん剤でたたく。早期に見つけられれば、完治も可能だ。ただ、抗がん剤には強い副作用という短所もある。



一方、東洋医学が効くことが多いのは、冷え性や更年期障害など複数の要因が絡み合って起こる病気や、深刻な病気につながりかねない体の不調である「未病」の治療だ。抗がん剤のような強い副作用はないが、慢性疾患では長く飲み続けなければならないという限界もある。




診断でも、東洋医学は機器を使わず、五感をフル活用する。患者の話を聞く「問診」、脈をみたりおなかを触ったりする「切診」、患者の顔色や舌などを診る「望診」、声の調子や口臭などをかぐ「聞診」の「四診」が基本だ。



四診を通じて、体質や症状から「証」を導きだし、薬を選ぶ。


証を決める際には、患者の体質を表す「虚実」、体温を表す「陰陽」を見極める。「虚」は体力がなく、気力が乏しい状態、「実」は反対に体力があり、声にも張りがある。「陰」は体が冷えており、「陽」はほてっている。



個人の証に合わせて処方するため、西洋医学でも注目され始めた個別化医療(患者個々の状態にあわせたオーダーメードの医療)の先駆けともいわれる。ただ、西洋医学で求められている科学的根拠を出しにくく、「効能がわからない」との批判を常に浴びてきた。



薬の科学的根拠を示すには「無作為化比較試験」という手法が用いられる。


患者を無作為に二つの集団にわけ、一つの集団には新しい薬、もう一つの集団には既存の薬、または偽薬を用いて、どちらが効くかを比べる方法だ。



しかし漢方の場合、(1)個別化医療のため、集団としての科学的根拠を出しにくい(2)患者の主観で症状を診るため、検査値などの客観的な指標を出しにくい(3)臓器別ではなく、その人を全体で診る「全人医療」のため、評価がしにくい――といった課題を抱える。


日本東洋医学会が2005年、10人以上の症例がある東洋医学の論文905本を検証したところ、無作為化比較試験をしていたのは13本だった。



例えば、インフルエンザと診断された患者20人のうち、8人にタミフル、12人に麻黄湯(まおうとう)を処方したところ、平熱になるまでの時間は、両方とも20時間程度だったという比較試験がある。


ただ、西洋医学の基準では、この試験だけで「麻黄湯はタミフルと同じ効果」とまではみなされない。試験の規模が小さく、精度が不十分とされるからだ。



「漢方は効かない」という西洋医学界からの批判を受け、厚生労働省の研究班は現在、漢方がどんな人に効きやすいのかを定量化する研究に取り組んでいる。全国10の病院で、3年間かけて数万人分の患者データを蓄積する計画だ。



患者が受診の際に、症状とその程度を0から100の範囲でコンピューターに入力。西洋医学の診断名と漢方の証、処方薬のデータも同時に集める。体質や症状と、漢方の効果との間に一定のパターンを見つけることで科学的根拠を示し、治療の標準化につなげようというプロジェクトだ。



主任研究者を務める慶応大准教授の渡辺賢治は「漢方の処方は、経験に基づき行われてきた。伝統医学の匠(たくみ)の技だけでなく、経験の少ない医師でも標準的な処方ができる指針を作りたい」と話している。



(岡崎明子)



(文中敬称略)



 


取材にあたった記者


都留悦史(つる・えつし)
72年生まれ。東京経済部などをへて、GLOBE記者。


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岡崎明子(おかざき・あきこ)
70年生まれ。企画報道部などをへて、科学医療グループ記者


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権敬淑(くぉん・きょんすっ)
68年生まれ。東京社会部などをへて、大阪科学医療グループ記者


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小林哲(こばやし・てつ)
71年生まれ。広州支局長などをへて、大阪科学医療グループ記者



静物写真


小寺浩之(こでら・ひろゆき)
65年生まれ。雑誌編集者をへて静物写真の世界へ。日本写真家協会会員







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