「従来の自動車メーカーがやらなかったことをしたい」
オート三輪車は安価で軽量、なおかつ悪路にも対応できたため1930年代から80年代辺りまで日本中を走っていた。しかし、軽自動車の台頭により衰退の一途をたどる。最後まで生産を続けていた東洋工業(現マツダ)、ダイハツも1970年初めまでには撤退し、現在では走る様子を見る機会もほとんどなくなった。
2008年創業の同社はオート三輪車によく似た見た目の三輪EV「エレクトライク」を主力商品に据える。社長の松波登さんは大学卒業後、トヨタ自動車のワークスドライバーとして活躍し、モンテカルロ・ラリーにも出場したラリードライバーだった。
なぜ三輪車で勝負を仕掛けたのか。J-CASTニュースの取材に対し、同社担当者は「ベンチャーなので従来の自動車メーカーがやっていないことをしたかったんです。ニッチ戦略ですね。三輪車はパンクしにくいし、新しいモビリティになりえます」と語る。
生産はインドの大手メーカー、バジャジ・オートから車体を輸入し、電動自動車に改造する手法で試みる。13年4月より受注を開始し、15年2月からは富山工場(富山市)も稼働し始めた。現在は年間100台を生産目標とする。
エレクトライクは、一人乗りで、幅1.3メートル、長さ2.5メートルと二輪車よりも少し大きい程度の荷物搬送用三輪車。ドアはないがシートベルトも不要で、ヘルメット着用の義務もない。ただ、性能は今までの三輪車を上回る。高性能な小型バッテリーが搭載され、1度充電すれば最高速度50キロで約60キロの距離を走れるという。ギアもなく、原付自転車の運転経験がある人なら簡単に乗りこなせるそうだ。
オート三輪車はカーブで急ハンドルを切ったり、雨道でスリップしたりすると転倒しやすく、安定性に課題を残していた。その課題を克服するため、左右の後輪をそれぞれ別のモーターで駆動させ、安定性を高めた。担当者も「三輪車の概念を打ち破るほどの安定性、運転性があります」と胸を張る。実際、同社がYouTubeに投稿しているエレクトライクのテスト走行動画では、スラローム走行や八の字走行など複雑な運転もスムーズにこなせていた。また、走行時はEVならではの「静かさ」も魅力という。
これまで100万円~200万円の間で販売してきたが、型式取得後は政府補助金の対象となり得るため100万円以下の価格を目指す。
その懐かしいデザインがウケているのか、ツイッターや掲示板では「新しいのになつかしい」「いかしとうね」「おおっ、これはいいかも」といった声が寄せられている。
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