ヒトをはじめとする哺乳類で果糖を細胞内に運ぶタンパク質の立体構造と輸送のメカニズムを、京都大医学研究科の岩田想教授や野村紀通助教らのグループが解明した。生活習慣病やがんの治療薬の開発につながる成果で、英科学誌ネイチャーで1日発表する。
小腸の上皮に多く存在する膜タンパク質GLUT5は果糖を体内に取り込む役割をしている。また、乳がんや膵臓(すいぞう)がんでは、がん細胞にGLUT5が多く現れ、果糖を多く吸収して増殖していることも分かっている。
グループは、分子同士をつなぐのりの役割をする抗体を使ってGLUT5を結晶化することに成功し、エックス線で立体構造を解析した。その結果、GLUT5は、細胞の外側に開いた状態で中央のくぼみに果糖を取り込み、続いて内側に開いた状態に構造を変化させて内部に輸送していることをコンピューター解析を使って突き止めた。
立体構造や変化の過程が分かったことで、果糖の輸送を阻害する分子の設計が可能になる。岩田教授は「果糖と同じくエネルギー源であるブドウ糖を輸送する膜タンパク質は別にあるため、GLUT5の阻害剤は比較的副作用の小さい、生活習慣病やがんの治療薬として期待できる」と話している。
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