2015年10月30日 12時12分00秒
by Miles Smith
ウィルスを使ってガン細胞を攻撃して破壊するという治療法に対し、アメリカ食品医薬品局(FAD)が世界で初となる認可を下しました。この治療法は口唇ヘルペスを引き起こす単純疱疹をもとにしてガン細胞を破壊するというもので、これまで数十年にわたって研究が続けられてきました。
Cancer-killing viruses have finally arrived | Ars Technica
http://arstechnica.com/science/2015/10/cancer-killing-viruses-have-finally-arrived/
ウイルスは一般的に小さな胚のような形をしていて、人間の体内に入り込んだあとは自己増殖を行うために人間の細胞組織を乗っ取り、ウイルスに感染した細胞は徐々に破壊されていきます。ガン細胞が自己複製を繰り返して他の臓器に転移する「ステージ4」に至ると、細胞内ではウイルスに対する免疫機能が消滅します。この状態になるとガン細胞はウイルスに感染しやすい状態になるため、「ステージ4の段階でウイルスを使ってガン細胞のみを特定して攻撃する」という方法自体は何十年も前から研究が進められていました。
がん治療に新たな一手、ヘルペスウイルスを使った治療法が登場 - GIGAZINE
アメリカ食品医薬品局(FDA)は、悪性黒色腫(メラノーマ)が皮膚や皮下など他の臓器へ転移するほど悪化した「ステージ4」の腫瘍の治療方法として、ウイルスを使ったガン治療法を2015年10月27日に初めて認可しました。
今回FDAが認可した「talimogene laherparepvec (T-VEC)」と呼ばれるウイルスは、単純ヘルペスウイルスの遺伝子組み換えを行うことによって、ガン細胞のみを攻撃するようなウイルスとして作られました。ヘルペスウイルスがもとになっていますが、健康な細胞には影響しないため、体内でヘルペスを引き起こすことはありません。
また、T-VECはガン細胞を破壊すると同時に、免疫システムの一部を担うタンパク質「GM-CSF」をもつ遺伝子を運び、人間の自然免疫系を高めてくれます。
T-VECはガンに対する特効薬とは言い切れませんが、2015年5月に発表された臨床試験結果では、T-VECが腫瘍のサイズを縮めてがん患者の寿命が平均で4.4カ月伸びたことが明らかになっています。この結果に研究者は、ウイルスを使った治療と既存のがん治療法を組み合わせることで、患者の生存率を上げることができるかもしれないと期待を寄せています。
追加情報:
東大が新ウイルス療法を発表!
http://neovisionconsulting.blogspot.jp/2016/09/blog-post.html
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