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2015年10月25日日曜日

《加齢黄斑変性:3》 眼球内に薬剤注射、通院で治療可能に 長谷部日 (はせ べ・ひるま)


 現在、加齢黄斑変性の治療は主に外来通院で行われています。しかし、この治療が行えるようになったのは最近の話で、実はまだ10年もたっていません。歴史は浅いのですが、それ以前の治療方法と比較すると、治療効果も安全性も今の方がはるかに優れています。

 この疾患は、黄斑部の脈絡膜に異常な血管(新生血管)が発生する疾患です。新生血管の発生にはVEGFという物質が大きくかかわっています。VEGFはもともと全身に存在していて血管を維持する働きをしていますが、黄斑部でVEGFが過剰に産生されると脈絡膜に新生血管が発生して加齢黄斑変性になります。現在の治療では、このVEGFのはたらきを抑える薬剤(抗VEGF剤)を用いる方法が主流となっています。なお、日本人には少なく新生血管が出現しない萎縮型加齢黄斑変性には、抗VEGF剤は効果がありません。

 抗VEGF剤による治療は、注射で眼球内に薬剤を直接注入します。眼球に注射すると聞いて驚かれる方も多いのではないでしょうか。今のところ点眼や内服で抗VEGF剤を黄斑部に作用させることはできません。

 しかし、治療に使用する抗VEGF剤はごく微量で、点眼薬1滴程度です。注射に要する時間もわずかですから、実際に治療を受けてみると、思っていたより簡単に終わったと感じる患者さんが多いようです。治療は注射前後の処置をあわせても短時間で済み、入院せずに外来通院で行うことができます。帰宅後は普段通りの生活を送ることができますが、注射の傷口からの感染を防ぐために抗生剤の点眼を数日間行う必要があります。

 このような手軽な方法で加齢黄斑変性の治療ができるというのは、かつては想像すらできないことでした。近年、眼科で最も大きく発達した分野の一つであることは間違いないでしょう。

長谷部日 (はせべ・ひるま)

新潟大学医歯学総合病院・講師 〈眼科〉

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