2015年12月18日 11時31分00秒
By Maurizio Pesce
世界で初めてiPhoneのSIMロックを解除するなど、数々の「功績」を上げてきた伝説的ハッカーが自動運転カーをわずか一か月で作り上げたということが話題になっていましたが、その際にも名前が挙げられていたイーロン・マスクCEO率いるテスラからは記事に対して「極めて疑わしい(extremely unlikely)」とする声明が発表されています。
Correction to article: "The First Person to Hack the iPhone Built a Self-Driving Car" | Tesla Motors
https://www.teslamotors.com/support/correction-article-first-person-hack-iphone-built-self-driving-car
ここで取り沙汰されているのは、伝説的とも評されるハッカーのジョージ・ホッツ氏が寄せ集めのパーツとLinuxで自動運転カーをわずか一か月で開発してしまったとするBloomberg Businessの記事です。ホッツ氏がほぼ手作りで作り上げた車両の様子は以下の記事で確認できます。
伝説的ハッカーが自動運転カーをわずか1カ月で自作、すでに公道走行済み - GIGAZINE
ホッツ氏が開発に使った車両は日本円で約300万円というアキュラ「ILX」。この車両に各種センサーやカメラ、Intel製の超小型PC「NUC」を搭載してシステムを作り上げたとのこと。
ホッツ氏はテスラのマスクCEOから、テスラも導入している自動運転支援システム「Mobileye」を上回る性能を実現したら「多額の報奨金を支払う」という提案や、「君はテスラで働くべきだ」と仕事のオファーを受けていたと記事の中で語っています。さらにホッツ氏はマスク氏の提案に対し、「今は仕事を探しているわけじゃない。MobileyeをハックしたらPingして知らせるよ」と断ったとしています。
このBloomberg Businessの記事が掲載されてまもなく、テスラは公式サイトで声明を発表。そのタイトルは「記事への訂正(Correction to article)」というもので、Bloomberg Businessの記事で語られる内容に対してテスラの見解を述べるものとなっています。
Correction to article: "The First Person to Hack the iPhone Built a Self-Driving Car" | Tesla Motors
この中でテスラは「我々は、大規模な技術検証能力を持たない一個人や小さな企業が市販可能レベルの性能を備える自動運転カーを開発できるということについて、極めてあり得ないことであると考えています」と記事の内容について強い懐疑感を示し、「事前に学習させていた限られた区間でのデモ走行である可能性が高く、テスラはそのような技術を2年前に実現していました」と主張。さらに「しかし、そこから先は何百万kmという走行実験の中でさまざまな道路に遭遇し、プログラムのバグをつぶすという膨大な開発リソースを必要とします」と、個人レベルで自動運転カーを開発する可能性を否定する見解を述べています。
また、「99%の正確さをコンピューターに学習させることは比較的容易」であるものの、本当の自動運転技術で必要なのは99%を99.9999%にまで高めることであり、これが非常に難しいことであるとも述べています。
さらに、テスラでは自動運転技術を自社内で設計・開発しており、「記事で書かれているような、ベンダー技術の寄せ集めで自動運転カーを実現できるのであれば、テスラが唯一の自動運転カーを市販した企業ということにはならないでしょう」と主張。寄せ集めの技術で自動運転カーを開発することはあり得ないという見解を明らかにしています。なお、主に自社で技術を開発しているテスラですが、Mobileyeのテクノロジーについては「世界で最も優れたものである」と評価しており、同社のチップを購入して車両に搭載しています。
このように、テスラはホッツ氏とBloomberg Businessの記事に対して完全否定にも近いトーンで主張を展開。どちらの言い分がどれだけ正しいのかは当事者でないと判断は難しいといえますが、賛否あれど実際に自動運転カーを世に送り出した実績のあるテスラに一日の長があることは否めないのは間違いなさそうです。
By Daniel Palestino
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2015年12月18日 11時31分00秒 in ソフトウェア, ハードウェア, 乗り物, Posted by logx_tm
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