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2016年3月18日金曜日

画期的新薬を阻む日本の薬価制度は本末転倒だ 米国メルク会長兼CEO ケネス・C・フレージャー

引用元:
http://diamond.jp/articles/-/87825

医療費削減に迫られ大きく変わる日本の薬価制度。米研究製薬工業協会(PhRMA)会長で、米製薬大手メルクのケネス・C・フレージャー会長兼CEOに聞いた。
Photo by Kazutoshi Sumitomo
──日本ではがん治療の新薬「免疫チェックポイント阻害剤」が、効果は高いものの高額で医療財政を圧迫するという議論が出ています。小野薬品工業とブリストル・マイヤーズスクイブの「オプジーボ」が販売され、メルクも同じタイプの「キートルーダ」(海外名)を日本で開発しています。
 この新たながん免疫療法について、まず強調したいことは、近年の医学における画期的な発見であり、ブレークスルーとなったという点です。半世紀以上がん領域の研究を続け、ようやくキートルーダのような、自分の体が持っている免疫システムを使ってがん細胞を攻撃できる薬が完成したのです。
 キートルーダは、悪性黒色腫や肺がん、胃がんの治療薬として承認に向け動いています。肺がんや胃がんは、日本でも発病率が高く、大きな死因です。キートルーダは、まだまだ可能性があり、30種のがんで効果が期待できます。
 メルクとしては、(海外で)そのような価値に見合う価格を付けています。無論、患者のアクセスを促進するための値付けも考える。ただ、重要なのは、その値付けで次の新薬開発を行えるかという点です。
──日本では今年、当初の予想を超えて売れ過ぎた医薬品の薬価を引き下げる“巨額再算定”を導入し、画期的なC型肝炎治療薬などが、その対象となりました。キートルーダやオプジーボも標的となっていくのでは?
 願わくば、キートルーダが対象にならないことを祈っています。そもそも、医療費の問題を解決するために再算定の適用を拡大する政策は本末転倒です。
 確かに(対象となった)医薬品を見ると、非常に高額だと思います。ですが、創薬というビジネスでは、10年単位の長い時間と多額のコストを掛けた研究開発の大半が、失敗に終わります。リスクを冒し、成功にたどり着いた一握りの企業に対して、まるで罰則を科すような政策だと思います。
 また、3年連続の薬価改定が行われますが、薬価についてこのようにシステムの根本を変えてしまうならば、日本市場に長期的に投資することが難しくなります。
──新薬メーカー特有のリスク回避のため、メルクもファイザーのように、M&Aへの注力や、租税回避目的の本社移転といった手段を考えますか。
 まず断言しますが、租税回避目的の買収は行いません。また、メルクの戦略と企業価値はリスクを取っても、自らイノベーションを追求し、世の中を変える薬を開発していくことにあります。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 宮原啓彰)


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