発表のポイント
免疫細胞の一種である制御性T細胞※1が大腸がんに対する免疫を弱めることを解明
逆に、大腸がんの周辺に存在するFOXP3※2を弱発現※3する細胞群は、がん免疫を促進することを発見
FOXP3を弱発現する細胞群の誘導にはある種の腸内細菌が関与していることから、将来、腸内細菌を調整することによる大腸がん治療の可能性に期待。
概要
大阪大学免疫学フロンティア研究センターの西塔拓郎博士、西川博嘉准教授、坂口志文教授らの研究グループは、大腸がんの組織内部の深くまで進行したリンパ球において、従来、制御性T細胞と見なされていたFOXP3陽性細胞の中に、FOXP3を弱発現する細胞群が多数存在し、がん免疫を促進することを明らかにしました。また、この細胞群は、免疫を抑制する能力を持たない活性型T細胞であり、大腸がんに付着する腸内細菌により腫瘍内で増加したIL-12などの炎症性のサイトカイン※4によって誘導されることを解明しました(図)。さらに、この様なFOXP3を弱発現する細胞群が多数浸潤※5する大腸がんは予後(治療後の経過)が良好である一方、抑制活性をもつ制御性T細胞が多数浸潤する大腸がんは他のがん腫と同様に、制御性T細胞の浸潤が予後不良の原因になることを示しました。
がん免疫治療において抗腫瘍免疫に働く細胞群として、制御性T細胞は大きな注目を集めており、この細胞群による免疫抑制をコントロールすることは、がん免疫治療をより効果的にするために必須のものであると考えられています。
本研究成果により、未だ一部の腫瘍でしか、がん免疫療法の効果が認められなかった大腸がんにおいて、制御性T細胞を標的としたがん免疫療法の可能性が示唆されました。また、腸内細菌が腫瘍内炎症を介して腫瘍免疫を高める可能性があることが示され、腸内細菌のコントロールによる大腸がん治療への応用の可能性が期待されます。
なお、本研究成果は4月26日(火)午前0時(日本時間)に「Nature Medicine」に掲載されます。
(以下略)
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