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2016年7月13日水曜日

がん新治療薬 適応外投与で副作用 死亡例も


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体の免疫力を高めることで、がん細胞を破壊する新しいタイプのがん治療薬「オプジーボ」を、安全性や有効性が確認されていない大腸がんなどの患者に投与し、全身の筋力が低下する重症筋無力症などの重い副作用を起こすケースが複数起きていたことが分かり、全国のがんの専門医でつくる日本臨床腫瘍学会は緊急の声明を出して注意を呼びかけることになりました。また「オプジーボ」を別のがんの治療と合わせて行った60代の男性患者が死亡したことも分かり、製造販売元の製薬企業も、抗がん剤などとの併用を原則として行わないよう社員が医療機関を訪れ、直接説明を行うことを決めました。

「オプジーボ」は、体の免疫の機能を活性化させて、がん細胞を破壊する新しいタイプのがん治療薬で、手術ができないほど進行した肺がんや皮膚がんでがんを縮小させるなど、これまでの抗がん剤には無かった治療効果が確認され、おととし世界に先駆け日本で承認されました。その一方で、一部で呼吸困難に陥る間質性肺炎や筋力が低下して、歩けなくなったりする重症筋無力症などの重い副作用が起きることも報告されています。

このため国内では、副作用に対応できる医療機関に限って薬が出荷されていますが、全国のがんの専門医でつくる日本臨床腫瘍学会によりますと、一部の医療機関が「オプジーボ」を海外から輸入し安全性や有効性が確認されていない大腸がんなどの患者に投与して、副作用が起きたたケースが複数確認されたということです。医療機関のホームページなどで情報を得たがん患者が、自由診療の形で受けているということで、入院設備が無いため副作用に対応できず、国立がん研究センターに救急搬送されてくるケースが起きています。

このため学会では、薬の投与を受ける場合は、がん診療連携拠点病院などに指定されていて、5年以上のがんの化学療法の経験のある医師がいることなど10の条件を示し、そのすべてを満たしている施設で治療を受けるよう呼びかける緊急の声明を出すことを決めました。

また製造販売元の小野薬品工業によりますと、オプジーボを、ほかの抗がん剤と合わせて使うなどした複数の患者に副作用とみられる症状が出て、このうち免疫細胞療法と呼ばれる治療法を合わせて行った60代の男性患者が死亡したことも分かりました。小野薬品工業では、ほかの抗がん剤などとの併用は安全性や有効性が確立していないとして社員がオプジーボを出荷している医療機関を一つ一つ訪れて説明を行い、ほかの抗がん剤などとの併用は原則として避けるよう注意を呼びかけることにしています。

学会の理事長を務める国立がん研究センター中央病院の大江裕一郎副院長は、「適切に対応しないと命に関わったり重篤な障害を起こしたりする副作用がある。そうした副作用に対応できる施設で治療を受けていただきたい」と話しています。

オプジーボとは

製造販売元の小野薬品工業によりますと、オプジーボは、先月15日までに推定で7542人に投与され、715人に重篤な副作用が起きたことが報告されています。このうち、肺の機能が低下し呼吸困難を引き起こす間質性肺炎は176人報告され、死亡例も10人以上となっています。また、全身の筋力が低下する重症筋無力症が8人、糖尿病の中でも症状が急激に進み死に至ることもある、劇症1型糖尿病が7人報告されています。

このため、小野薬品工業では、緊急時に対応できる医療機関などに限って薬を販売しています。このうち、1日当たり10人から20人の患者にオプジーボを投与している東京・中央区の国立がん研究センター中央病院では、1割ほどの患者で重篤な副作用が起きているということですが、入院施設があり、24時間対応できる態勢をとっており、緊急時にも対応できるとしています。
この施設で治療を受ける65歳の肺がんの男性は「とても注目されていてよく効く薬と聞いているので期待しています。一方で重篤な副作用のリスクを怖いと思うこともあり、緊急時にも対応してくれるこういう施設で治療が受けられるからこそ安心できると思っています」と話していました。

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