乳がん治療に新しい光 メラトニンと抗がん剤の同時接種が治療を促進
イランのタブリーズ大学の研究グループが開発した新たな薬の投与技術により、抗がん剤と睡眠ホルモンのメラトニンを併用して効率的な乳がん治療が行える可能性が示された。
この治療方法は乳がんだけでなく、さまざまながんの治療に応用できる可能性があり、今後、がん治療の効果が格段に上がる可能性も考えられる。
天然の睡眠薬 メラトニンとは?
夜、私たちを眠りに誘導する睡眠ホルモン「メラトニン」。私たちの体が作り出す天然の睡眠薬とも言えるだろう。良質な睡眠を得るには、夜間にしっかりとメラトニンを分泌させることが重要なのだ。
それでは、夜、メラトニンをしっかりと分泌させるにはどうしたらよいだろうか? そのキーは、実は「朝」にある。朝、きちんと起きて、日の光を浴びることが大切なのだ。なぜなら、朝日を浴びることで分泌される「セロトニン」はメラトニンの材料となるからだ(※1)。
また、夜は眠る1~2時間前から部屋の明かりを少し暗くすることで、メラトニンはより多く分泌され、眠りにつきやすくなるが、逆に、明るい光はメラトニンの分泌量を減らしてしまうので、睡眠にはよくないのだ(※2)。
メラトニンを乳がん治療に応用
「睡眠ホルモン」と呼ばれるメラトニンだが、睡眠に対する作用以外に、実はがん細胞を死滅させる働きがあることも示唆されている。そこに注目したのがタブリーズ大学の研究グループで、この天然ホルモンを乳がん治療に応用することを考えたのだ。
乳がんの化学療法では「タモキシフェン」という抗がん剤が使用されることが多いが、「副作用」や、薬が効かなくなる「耐性」がしばしば問題となる。そこで、研究グループはメラトニンとタモキシフェンを併用してタモキシフェンの投与量を減らすことで、副作用や耐性の問題が解決できるのではないかと考えたのだ。
分解されやすいメラトニン あるアイデアで解消
しかし、そこで問題となるのがメラトニンの不安定さだった。メラトニンは体内ですぐに分解されてしまうため、もし長時間効果を持続させようとするならば、繰り返しの投与が必要となる。
そこで、研究グループは驚きのアイデアを考えたのだ。メラトニンを目に見えないほど小さな脂質の泡(NLCs=nanostructured lipid carriers)の中に入れて、体内に投与するという方法だ。そうすることで、メラトニンは体内で少量ずつ、徐々に泡の中から放出され、長時間にわたって効果を発揮し続けるというのだ。
メラトニンと抗がん剤 より効率的にがん細胞を死滅させる
実験の結果、そのようにして投与されたメラトニンは、単純に投与された場合よりも、がん細胞を効率的に死滅させることが示されたのである。
また、NLCsには大きな副作用も見つかっていないことから、この方法は今後、さまざまながんの治療に取り入れられる可能性があるといえる。NLCsを用いることでメラトニンと抗がん剤の併用を可能にし、それにより、いっそう副作用の少ない抗がん剤治療が実現する可能性が示されたのである。
タブリーズ大学の研究グループが発見した方法は驚きだが、睡眠ホルモンであるメラトニンが、がん治療に応用できる可能性もまた意外なことだ。そう考えると、朝しっかりと起きて日光の光を浴び、そして、夜は暗くして眠る。この地球のリズムに同調した生活が、私たちをがんの脅威から救う方法の一つなのかもしれない。
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