2016年9月
概要
当社は、EVバス用ワイヤレス急速充電システム向けに妨害電波を抑制する技術を開発しました。本技術により、ワイヤレス急速充電システムを実用化するために重要となる、他の無線通信を妨害する不要な電磁波の抑制が可能となります。早稲田大学理工学術院紙屋雄史教授研究室と共同で行っている環境省委託事業「CO2排出削減対策強化誘導型技術開発・実証事業」の一環として、2016年2月より実施しているEVバスの公道実証実験においても、本技術が使用されています。本技術についての詳細は、米国ミルウォーキーで開催される国際学会IEEE ENERGY CONVERSION CONGRESS AND EXPOSITION(ECCE)にて、9月19日(現地時間)に発表します。
開発の背景
充電用ケーブルを使用せず充電できるワイヤレス充電システムは、安全で手間のかからない充電方法であり、高頻度の充電を行う必要があるEVバスに適した充電方法として期待されています。当社は、ワイヤレス充電システム向け周波数として標準化が進む85kHzを利用し、44kWの電力伝送を行うワイヤレス充電システムを開発しました。一方で10kHz以上の高周波を利用する場合、電波法における高周波利用設備としての許可が必要となり、その申請においては、装置から放射される電磁波の大きさを、放送や他の無線通信を妨害しない許容値以下まで落とす必要があります。しかし、ワイヤレス急速充電システムから放射される電磁波の大きさは、送電電力に伴って大きくなるため、44kWの電力を送電すると、その許容値を10倍上回ってしまうという課題がありました。
本技術の特徴
そこで当社は、44kWワイヤレス急速充電システムにおいて、送受電パッドを22kWの2系統の装置にわけ2か所から逆相で送電する方法を採ることで、それぞれ放射される電磁波が打ち消し合い、不要な電磁波を抑制しました。
ただし、2系統のパッド間で干渉結合があると、放射される電磁波の大きさと位相がずれ、打ち消し効果が低減してしまいます。それを防ぐため、2系統のパッド間の干渉が小さくなる最適な位置関係を検証しました。2系統のパッドの相対位置を平行に回転させたとき、パッド間の干渉結合の方向が反転する性質があり、干渉結合の方向が反転するときに、干渉結合が必ず0になることに着目し、不要結合が0になる相対角度を電磁界シミュレータにより割りだすことで、パッド間で生じる干渉の抑制を実現しました。
これらの技術により、距離が10m離れた位置における電磁波の大きさが約1/10に抑制され、送電量を44kWから損なうことなく高周波利用設備の許容値を満たすことが可能となりました。
今後の展望
公道での実証実験は2016年末ごろまで実施予定であり、実証試験後はその結果を踏まえて本技術の課題を抽出し、早期の実用化に向けて研究を進めていきます。
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