市営地下鉄、54年の取り組み 善意の循環前提
名古屋市営地下鉄が乗客に無料で傘を貸し出す「友愛の傘」。今月54年を迎えた取り組みで、これまで寄付された12万本以上の傘が備えられたが、返却されることはほとんどない。善意の循環を前提とする仕組みだが、利用者のマナーは改善されず、地下鉄の全85駅の傘立ては、ほぼ空の状態が続いている。
名古屋市中区の地下鉄金山駅では、中改札口と南改札口の間、階段の脇にひっそりと傘立てが置かれている。乗降客が気に留める様子はなく、通学中の男子高校生(17)は「ここに傘があるのを見たことがない」と話す。
「友愛の傘」は1962年11月、市交通局に地下街の連合会から傘3000本の寄贈を受けて始まった。各駅に傘立てを設けて返却場所を限定しないことで、多くの人が雨にぬれずに済むことができる仕組みだ。傘は全て寄付で賄っており、市交通局はこれまで10人以上の個人と企業など40団体から計12万7874本を譲り受けた。毎年、数百~数千本の寄贈を受け、傘立てに備えるが、数日で空になる。傘立ては折れるなどした傘のごみ箱として、使われるケースも目立つという。
名古屋、栄、金山の3駅の計約120店舗でつくる名古屋地下鉄地下街連合会(奥村豊会長)は近年、5年おきに数千本を寄付している。担当者は「返却されないのは残念だが、地下街のお客様の利便向上につながる」と話し、来年も6000本を寄贈する予定という。
市交通局運輸課は「ありがたいことに寄付が続いているので、仕組みは維持していきたい。思いやりの精神を持って利用してほしい」と話し、利用者のマナー向上を呼び掛けている。【山口朋辰】
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