中国で増加する患者とその家族による医師への暴行事件だが、今回もそんなモンスターペイシェントによる、看護師に対する暴行事件が起こった。「人民日報」(11月21日付)によると、四川省成都市にある四川大学華西医院で、看護師が入院患者の薬を準備していたところ突然、患者の家族が暴れだし、看護師に重傷を負わせたというのだ。
病院側の説明によると、11月20日朝、看護師が呼吸器系内科の病棟に入院している患者の薬の準備のため、治療室にいたところ、患者の息子(45)が暴れながら治療室に入ろうとしたという。周りにいた病院関係者が止めに入ると、「看護師が薬を盗むかもしれない。薬の調合も間違えるかもしれない。俺が監視しないと、何をされるかわかったもんじゃない!」と、無理やり治療室のドアを力任せにこじ開けて入室。暴れ回った際に、室内にいた看護師が突き飛ばされ、ドアに頭を打ちつけて、大けがを負ったというのだ。
地元メディアが掲載した写真を見ると、なんとも痛ましい。看護師は額部分に4cmにもわたる切り傷を負って大量出血し、8針縫ったという。その上、外傷性くも膜下出血の可能性も疑われ、精密検査を受けている。病院側は看護師への暴行事件として警察に通報し、院内に設置された監視カメラの映像が証拠となって、この男は逮捕された。
中国の病院では、治療法や術後の対応などをめぐり、不満を持った患者の親族が病院関係者に暴行を働くといった事件が後を絶たない。この事件の2日後にも、山西省の病院で女性医師が、院内で男に刃物で9カ所刺されて重傷を負った。傷は心臓にまで及んでおり、現在も意識不明の重体だという。病院には犯人の5歳になる娘が手足口病で入院しており、病院側と治療法をめぐり、なんらかのトラブルがあった可能性が指摘されている。
さらに今年5月には、医師が患者の親族から殺害されるという、信じがたい事件も発生している。湖南省の病院で頭部に軽いけがを負った幼児の手当てをしていた医師が、突然この幼児の親族2人から院内で暴行を受け、死亡したのだ。警察の取り調べに対し、2人は「医師の治療に積極性を感じることができず、不満に思ったため殺した」と身勝手極まりない供述をした。
中国では、担当医師に治療費以外の“謝礼”を支払うことが当然の習慣となっており、特に地方都市や田舎に住む貧困層は「謝礼を十分払えないと、いい加減な治療をされる」という先入観を持ってしまうのだ。こうした考えから、患者側と病院側は信頼関係を築きにくいといった事情もある。それにしても、人を救っても逆恨みされるようでは、そのうち、この国から医師がいなくなってしまうかも!?
(文=青山大樹)
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