AD(Active Directory)と同様の使い方ができるSamba 4
Windows Server 2003のサポート終了を間近に控え、CAL(Client Access License)のコスト削減などを目指して「脱Windows」を決心する企業IT部門は少なくない。だが、次期サーバーOSとしてLinuxの関心が高まる一方、Windows Serverで構築・運用してきた重要なIT資産であるADやファイルサーバーが使えなくなるのは困るといった声も聞かれる。こうしたIT部門の懸念を解消するのがOSSの「Samba 4」だ。
「Samba 4は、Windows ServerのAD環境やファイルサーバー機能をLinux上で実現するためのミドルウエアです。既存のWindowsドメイン環境を移行することにより、従来と同様のGUIによる操作やグループポリシーなどを使った運用管理が可能です」。こう話すのは、商用Sambaや統合認証などのOSSソリューションを提供するオープンソース・ソリューション・テクノロジ(OSSTech)の小田切耕司氏だ。
Sambaは1992年から開発が始まり、Windowsファイルサーバー互換として長い歴史と多くの実績がある。ファイルサーバーとして利用されるNAS(Network Attached Storage)製品の多くがSambaを利用していることでも、実績を証明できるだろう。そして、2012年12月に発表された最新バージョン「Samba 4」からAD機能が加わり、Linuxサーバーと組み合わせることで、一気に「脱Windows」のソリューションとして注目されるようになった。
WindowsクライアントがSambaのサーバーにアクセスすると、SambaはWindows Serverと同様の振る舞いをする(この通信プロトコルはマイクロソフトが正式に全世界へ公開しているものなので特許や著作権で問題となることはない)。このため、ユーザーはSambaへの移行を意識せずに従来通りの方法で接続して業務が行える。一方、IT部門はOSSによるコスト削減や、今後のクラウド対応を視野にLinuxベースのIT基盤を構築できるといった利点もある。
OSSでIT基盤を統一しコスト削減
具体的にSamba 4の主な特徴を見てみよう。まず、Windows Serverで構築されたADのドメインコントローラー機能に対応したことにより、企業がこれまで使用していたユーザーID、パスワード情報やグループポリシーをそのまま移行できる。また、社員の異動などに伴うユーザー情報やグループポリシーの設定・変更などのシステム管理はGUIベースのリモートサーバー管理ツール「RSAT」で行える。Linuxのコマンドによる設定・管理はちょっと不安があるというIT担当者も、Windows ServerのADと同様に扱え、運用管理の手順を変える必要はない。
そして、Samba 4は移行が比較的、簡単に行えることも特徴だ。Windows Server 2003から、Windows Server 2012にADを移行する場合と、LinuxサーバーにSamba 4を導入する場合の作業の違いについて、小田切氏は「Windowsの場合も移行作業の手間は変わりません。しかもSamba 4はコマンド1つで初期導入が可能で、Windowsからの移行もコマンド1つで可能です。当社はOSSに関する豊富な導入実績と経験があり、企業の要望に応じて導入、移行をサポートします」と述べる。
また、「非Windows」のLinuxの利点として、CALが不要になることが挙げられる。コスト効果はクライアント台数によって異なるが、1万台規模の場合、数千万円のコスト削減が見込めるという。さらに、コスト削減のみならず、IT部門は面倒なライセンス管理が不要になるなど、様々な効果が期待できる。このほか、Windowsに比べ、Linuxはウイルス感染などの攻撃を受けにくいといった効果もある。
OSSのSambaは自身で導入すれば無料で利用することも可能であるが、OSSTechは国内のITベンダーとして独自にSambaの機能を強化し、検証済みのものを製品パッケージとして提供している。そして、自社でソースコードを持ち、様々なニーズにスピーディーに対応できるという。例えば、ある企業でファイルサーバーのディスク容量を節約したいため、大容量の動画データの保存を禁止したいとの要望があった。それに対し、OSSTechではSambaに独自モジュールを開発・追加し、ファイルの種類ごとに容量制限をかけられるように対応したエピソードもある。
同社ではSamba 4をはじめ、シングルサインオンや統合認証のソリューションをOSSで提供。さらに、社内ファイルサーバーへスマートフォンやタブレットなどのWebブラウザーからアクセスできる製品を用意するなど、時間と場所に制約されることなく情報を利活用できる「クラウド&モバイル」対応のソリューションを強化、拡充している。
そして、小田切氏は「開発や運用支援など多種多様なツールが無料もしくは安価に用意されていることもOSSの特徴です。Samba 4などのアプリケーションをはじめ、企業のIT基盤をOSSで統一することで大きなコスト削減も可能です」と指摘する。
OSSをベースに企業ITの「あるべき姿」をサポート
OSSを戦略的に活用したいが、どう進めていけばいいのかロードマップがうまく描けないといった企業もあるだろう。こうした企業をはじめ、様々なシステムの課題を抱える組織に対し、レッドハットでは将来のクラウド&モバイル対応などを見据えた企業ITの「あるべき姿(To Be)」を描き、「ITモダナイゼーション」を推進している。企業ITのソフトやハードを最新の製品や設計で置き換えるだけでなく、「OSSをベースにシステム更改に向けた多様な選択肢の提案や、ベンダーロックインから解放されたシステム構成の標準化などを支援します」と、レッドハットの水橋久人氏は同社が考えるITモダナイゼーションについて説明する。
企業ごとに目指すITのあるべき姿および現在の到達レベルは異なるため、そのレベルに合わせた適材適所を基本に提案する。例えば、パブリッククラウドとプライベートクラウドを組み合わせ、モバイルからアクセスしやすいIT環境を構築するという将来像が最近は描かれることが多い。レッドハットは、現時点で一部実現した標準化仮想化基盤から、次のレベルのクラウド基盤に向けて何をどのような手順でどう実現していくかを実装も含め支援する。
そして、OSS活用のロードマップづくりなどを支援するソリューションの1つが、レッドハットの「CoE(Center of Excellence)」である。CoEは、部署やプロジェクトを横断する技術的な組織またはチームのこと。レッドハットのコンサルタントがCoE組織の立ち上げやIT運営をサポートする。そして、OSS移行の戦略・立案、システムアーキテクチャーの設計、技術情報の提供やトレーニングなど、レベルに応じたソリューションを提供する。
「Windows Server 2003のサポート終了は、企業IT全般を見直す絶好の機会です。当社やパートナーのエキスパートが持つ豊富なITナレッジを生かして様々なプロジェクトを支援します」と水橋氏は強調する。あるべき姿を描き、クラウド&モバイル対応の目標に向けて、レッドハットと巨大なOSSのエコシステムの豊富なノウハウが企業ITをネクストレベルに進化させる。
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