ローンやキャッシングなど、何かしらの借金をしている人は多いはず。しかし、もしそれが“1億円”という規格外の額になってしまったら……。決して他人事ではない、普通の実例を紹介する。
◆役員が会社を乗っ取り!資産230億が一晩でゼロ
莫大な資産は、他人からの羨望や嫉妬どころか、狙われることも。実業家の山口伸廣氏は、一時230億円もの資産を築いたが、それを一晩で失った経験を持つ。
「230億を築く前に、実は24歳の時に一度失敗しているんです。初めての起業で失敗した後、経済を学ぼうと夜間の大学へ通いました。一度失敗しているので講義内容が面白くてのめり込みましたね。そのかいあってか、次に起こした建設不動産会社は成功。当時まだ珍しかった短期賃貸マンションなどがウケ、大口契約が次々に決まりました。気づいたら資産が230億になっていましたね」
40代まで順調に資産を築いていったある日、その時がやってきた。
「突然、臨時の役員会議が開かれると言われ、行ってみたら私の社長解任決議だったんです。発案者は役員を兼任していた当時の経理部長。私はお金の計算が面倒なので、会社の通帳や実印を経理部長に預けてお金のことはすべて任せていました。つまり知らない間に会社を乗っ取るための手続きは、済んでいたんです。そうして私は、一夜にして総額230億円の財産をきれいに失いました」
さらに経理部長は、山口氏の名義で勝手にあちこちの金融機関から借り入れをしていたという。
「身に覚えのないことで信用金庫から呼び出されて知りました。あげく、書類には私の印鑑が押してある。向こうは私がとぼけているとでも思ったのか、借用書を顔に向かって投げつけられましたよ」
すべての資産を奪われ、手元に残ったのは100億円に上る膨大な借金だったという。
「会社を取られた私には到底返せる金額ではない。だから、中途半端に返そうとするのではなく、10年間という“借金の時効”をひたすら耐えて待ちました」
山口氏は自己破産をする気は全くなかったという。
「資産を失った私を見放す人も多い中、4人の社員が私についてきてくれたんです。この4人の信頼に応えたかった。借金から解放されたらすぐに起業しましたね。カネはなくなっても、私の培った人脈や稼ぐ技術、考え方はなくならない。再起する自信はありました」
現在は不動産業のほかに幼稚園や美術館など多角展開し、年商は50億円。当時の4人の社員のうち、1人は独立して社長をやっているという。臥薪嘗胆とはこのことだ。
【山口伸廣氏】
実業家。’48年、長崎県生まれ。逆境コンサルタント。49歳で経営していた会社を乗っ取られて、資産がゼロになる。現在は復活し、10社以上の経営に携わる。著書に『逆境の教科書』(集英社)がある
― 実録[借金1億円]の普通な人々 ―
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