2017.01.27 11:00
ワクチンといえば子供のためと思いがちだが、最新の知見からは「中高年こそワクチンで免疫力を高めよ」というアプローチが注目されているのだ。ワクチンで予防できる疾患は、がんや認知症といった "国民病"にまで広がろうとしている。
疫学研究が進み、これまで生活習慣や遺伝との関係性が指摘されてきた「がん」という疾病が、むしろ細菌やウイルスなどによる「感染症」と密接に結びついていることがわかってきた。
たとえば、肝臓がんの原因となるB型肝炎ウイルスについては、ワクチン接種によってがんの発症リスクを下げる取り組みが進められている。さらに、がん細胞そのものの増殖を阻止するワクチンの開発も進められている。
昨年12月、NEC は創薬事業への参入を発表。「がん治療用ペプチドワクチン」開発を推進する新会社を設立した。NECの広報担当者の説明。
「このワクチンは、『がんを攻撃する免疫』を活性化する治療法です。開発.実用化のためには約 5000億通りあるアミノ酸配列のなかから、免疫を活性化するペプチド(アミノ酸が数個から数十個結合した分子)を見つけなければならず、大きな課題となってきました。
それが今回、当社独自のAI技術を用いることで、短期間かつ低コストでワクチン候補となるペプチドを見つけられるようになった。すでに臨床研究を通じて食道がんや乳がんなどの治療に効果が期待できることがわかっています」
同社はワクチン実用化への研究を進めるために新会社設立に踏み切ったという。
また、「オーダーメイドのがん治療ワクチン」の研究も進んでいると語るのは秋津壽男・秋津病院院長だ。
「がん患者の体から摘出したがん細胞を培養するなど処理を加え、その人のがん細胞にだけ効くワクチンをつくるというアプローチで、『自家がんワクチン療法』と呼ばれています」
他にも様々なかたちで「自分の免疫力でがんを防ぐ」試みが進められている。白澤卓二・白澤抗加齢医学研究所所長がいう。
「注目されているのは『腸内環境』を改善することで免疫機能を上げ、がん細胞を攻撃する力を作り出すという手法。私の診た前立腺がんの患者さんでも、乳酸菌で腸内環境を整えることで、ステージIVから転移が進まなくなった例がある」
腸内細菌叢と免疫機能の関係は医学界の最注目テーマの一つだ。それががん予防にもつながる可能性が示唆されているのだ。
※週刊ポスト2017年 2月3日号
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