2017.02.1
編集部
株式会社バイオマスター(神奈川県横浜市、社長 木村雅昭氏)は、2002年12月に再生医療技術を開発するために設立した研究開発型ベンチャー。
現在は、大手化学会社カネカ(バイオマスターの株式83%取得)のグループ会社として、毛髪再生や脂肪由来幹細胞による乳がん治療後の乳房再建、顔面変性など高度美容外科の技術開発に取り組んでいる。
同社のこれまでの再生医療に関する成果として特筆されるのは、マウスの毛根から採取した細胞を毛の生えていない別のマウスの皮膚に移植し、毛を生やす実験に成功したことが挙げられる。
移植したのは、毛髪の付け根の皮膚組織の中にあり発毛を促す成分を分泌している毛乳頭細胞。
黒い毛のマウスから毛乳頭細胞を採取し、無毛のマウスの皮膚組織の中に特殊な注射器で移植、4週間後に注射した部分から約8割の確率で毛が生えた。
現在のところ、受精卵が持つ遺伝子を自分のものと入れ替えるのは、技術的に容易でない。そこで、自分の体細胞から最終分化する前の幹細胞を取り出して培養し、増やすという「組織再生医療」の方法を採った。
この組織再生医療は、最終分化した完成した細胞ではなくその前段階である幹細胞を使うことで、様々な組織を作り出すことができる。
幹細胞は「細胞に対する基本形」であるため、どの臓器にも存在し、自分とまったく同じ性質の細胞を生み出せる。
この考えに基づいて毛髪を再生させるのが「毛髪再生医療」というもの。毛髪のもととなる細胞は、毛包下部にある毛乳頭部分の「パピラ細胞」と毛包の皮脂腺付着部のバルジ領域にある「表皮幹細胞」。この2つの細胞を培養し増やして皮膚に移植することで毛包が誘導され、毛が生えるという仕組み。
同社は、髪を再生させる細胞移植方法として特許を取得している。特許は、移植部の皮膚を100ミクロンから400ミクロンの分層で剥離し、その分層皮膚を薬剤処理して表皮部分と真皮部分に分離し、表皮部分のみを使用して真皮部分を廃棄する。
分離した表皮部分は、採皮部の露出した残りの真皮の上に移植するが、その際に毛乳頭細胞もしくは組織を真皮の上に移植し、その上から表皮を移植することによって培養細胞を用いる再生医療の実現に繋げた。
現在、基礎的な研究段階だが将来は、人の毛髪を再生できるようになる可能性があるだけに期待は大きい。
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