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国会では今、犯罪の計画段階で処罰の対象とする「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ「テロ等準備罪」を新設する「組織犯罪処罰法改正案」を巡って審議がされていて、かなり紛糾している。
政府はテロ等を防ぐため、「重大な犯罪」を目的に集まった「組織的犯罪集団」が、「役割」を決めて具体的に「計画」し、実行に向けた「準備行為」をした時に逮捕等ができる新しい法律を作ろうとしている。
一般人は対象ではないと説明しているし、例えばちょっと極端だが、誰かを「殺そう」などと話し合って計画しただけでは逮捕されず、実際に犯行のためのナイフを買ったり、ナイフを買うお金を準備したりするといった行為が伴った時に「処罰の対象となる」と、政府は説明している。
■TOC条約とは?
安倍首相は「テロ対策などのためには、この新しい法案が不可欠だ」と成立に強い意欲を示している。
安倍首相(先月23日)「本条約(TOC条約)を締結することができなければ、東京オリンピック・パラリンピックをできないと言っても過言ではありません」
安倍首相が「東京オリンピック・パラリンピックが開催できないかもしれない」と述べる根拠は、安倍首相も指摘したTOC条約(=国際組織犯罪防止条約)を早く結びたいからだ。
TOC条約は、犯罪者の引き渡しなど各国が協力して国際組織犯罪に対処するための条約で、現在187の国と地域が加盟しているが、G7(先進7か国)で加盟していないのは日本だけだ。
加盟するためには何が犯罪にあたるのか、各国である程度共通のルールを持つことが必要で、そのために政府は「今回の新しい法案の成立が必要だ」としている。
■対応できない“具体的”3事例
政府は、今の法律では対応できない具体的なケースとして「ハイジャック」「化学テロ」「サイバーテロ」の3つの事例を提示している。
しかし、民進党は3つの事例のうち、「ハイジャック」「化学テロ」については「今ある法律で対応可能だし、新しい法案は権力の乱用につながりかねない」として反論している。
例えばハイジャックの場合、テロ組織がハイジャックを計画して航空券を予約した時、政府は「予約をしただけでは今の法律で対応できない」としている。しかし、民進党は「刑法の解説書には、今の法律でこうした事態に対応できると書かれている」と指摘している。
次に化学テロの場合、テロ組織が殺傷能力の高い化学薬品を作って一般市民の大量殺人を計画し、原料の一部を入手した時、これも政府は「今の法律で対応できない」としている。これについても民進党は別の本を取り上げ、「今の法律で対応できる」と指摘している。
一方、政府は過去の判例を挙げて、「裁判所が予備罪の適用には極めて慎重なため、今の法律では対応できない」と主張している。
民進党幹部からは「政府は、まだ十分に説明していない。オリンピックが開けないように国民に見せかける、ごまかしのようなものだ」という声も出ている。
■納得のいく説明を
政府が示した新しい法案が必要な3事例のうち「サイバーテロ」の場合は、テロ組織が大都市をパニックに陥らせることを計画し、ウイルスプログラムを作るといったケースだが、これについては野党は言及していない。
法案が出ていない今の段階では、まだ何とも評価しかねる。政府・与党は法案を3月上旬に国会提出することを目指しているという。
しかし、テロ対策のために今回の新しい法案が必要なのであれば、今の法律では何が足りないのか、時の権力者によって乱用されることはないのか、政府は法案の提出までに、きちんと国民が納得できるよう説明をする必要がある。
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