February, 21, 2017, 大阪--大阪大学レーザーエネルギー学研究センターの余語覚文准教授、(兼)JST「さきがけ」研究者らのグループは、レーザ光を使って粒子を加速する新しい手法を発見し、必要なレーザ強度を従来の100 分の1に効率化した。この技術は「粒子線がん治療」や「非破壊検査」への応用が期待される。
強いレーザの光を使えば、イオンなどの微小な粒子を加速することができる。しかしながら、イオンを1000万電子ボルト(光速の15%)を超える非常に高いエネルギーまで加速するためには、極めて高い強度のレーザが必要であるとされてきた。
今回、余語准教授らの研究グループは、粒子加速の効率を上昇させる「時間幅効果」の原理を発見し、イオンの 一種である陽子を、従来の研究例と比べて100分の1のレーザ強度で同等の効率(エネルギー:3300万eV)まで上昇させることに成功した。
この成果は、「切らずに治すがん治療」である粒子線がん治療や、「橋などのインフラを透かして診断」する非破壊検査など、安全・安心に貢献する技術につながる。
レーザの光を極めて短い時間(およそ1兆分の1秒)に小さい領域(数10ミクロン)に集中させると、あらゆる物質が電子とイオンに分離した「プラズマ」になる。このレーザの光でつくり出した高密度のプラズマからは、高エネルギーの粒子や光が発生する。特に、イオンを加速する技術は、粒子線がん治療や中性子非破壊検査、核融合の点火などに役立つと期待されている。しかしながら、これらの応用のためには、イオンを1000万~1億電子ボルトのエネルギーまで加速する必要があり、レーザ装置には極めて高い強度が要求される。
研究グループは、プラズマの温度が時間と共に成長する「時間幅効果」の原理を発見した。この原理では、プラズマの温度が従来の法則を超えて上昇するため、イオンの一種である陽子の加速に利用すると、加速エネルギーとして3300万電子ボルト(=33 MeV, 光速の25%に相当)を得ることができた。この結果は、従来ならば100倍のレーザ強度でなければ得られなかった成果(Robsonら Nature Physics Vol. 3, P58, 2007年)であり、レーザによる粒子加速を、大幅に効率化することができた。
同研究グループは、髪の毛の太さ程度(およそ100 ミクロン=100分の1 センチ)の短い範囲に、3300万ボルトという極めて大きな電圧をつくり出すことに成功している。
(詳細は、www.osaka-u.ac.jp)
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