小国町議会(定数10)の3月定例会最終日が17日、開かれた。町立病院で予定していた人工透析治療の中止を巡って町民から提出された調査特別委員会を設置して真相解明を求める請願は、6対3で不採択となった。傍聴した患者らは「まだまだ聞きたいことがいっぱいある」「町議会は少数意見を封じ込めた」などと、怒りをあらわにした。【佐藤良一】
請願を付託された総務厚生常任委員会の伊藤重広委員長が、不採択とする審査結果を報告。町立病院で一日も早い透析治療の実現を求める請願を昨年12月に趣旨採択したこととの整合性や中止の真相解明を他の町議から質問され、「常任委員会で現在調査中だ」と答えた。近く委員会を開くという。
透析患者の命を守る会の本間義信事務局長は「実現までもう少しだった透析治療を中止ありきで白紙に戻した不正は許せない。今後については、弁護士と相談して決めたい」と語った。
また、透析患者の送迎事業費3013万円を含めた59億3400万円の2017年度一般会計当初予算案を議決。「送迎事業を実施するだけで透析問題は解決しない」とする意見があったものの、6対3で可決された。
■視点
町、説明責任果たしたか
小国町議会3月定例会が閉会した。町立病院で予定していた人工透析治療の中止に関する疑問に、町は真摯(しんし)に説明責任を果たしたのか。
透析実施の是非を検証したとする全8回の関係者会議の記録を残さなかったことについて、仁科洋一町長は「検証を行った内容を結果として報告書にまとめた」と答えたのみ。中止を決めた時期についても、検証報告書の素案を確認した昨年10月18日だと述べたが、意思決定の過程は全く見えなかった。
中止を決定したとする約20日前の同9月27日、町は透析患者との意見交換会を開いている。冒頭、病院長が「病院で透析はできない」と一方的に宣言し、同席した仁科町長も発言を追認していた。この後、説明する場を設けることはなかった。
毎日新聞のインタビューで、仁科町長は山形大医学部から医師派遣について確約がなかったことを中止の一番の理由に挙げた。中止を決める前に同医学部に相談しなかった理由を定例会で問われ、「町立病院としての体制の課題が要因で中止にしたので、相談には行かなかった」とした。また、協議を重ねた同医学部に対し、透析開始に向けた合意はなかったとした。
しかし、昨年の3月定例会では、透析関連費用約7900万円を盛り込んだ2016年度当初予算案が可決された。同医学部は専門医を派遣する準備を進め、公立置賜総合病院(川西町)は町立病院から看護師と臨床工学技士の研修を受け入れるなど、治療に向けて着々と進んでいた。
昨年7月の町長選で初当選した仁科町長は、約3カ月で白紙に戻した。定例会での一連の答弁からは「中止ありき」の姿勢しか見えず、到底納得できるものではなかった。【佐藤良一】
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