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肉質は向上、コストも半減 沖縄初の試みが“豚々拍子”の飼料とは?
2017年3月11日 07:48
琉球大学と金城ミート(今帰仁村)、リバネス(東京)はこのほど、通常は捨てられることが多い泡盛の蒸留粕(かす)を乳酸菌発酵させた飼料を使った実証実験で、養豚の飼料代の半減と肉質の改善に成功した。配合飼料を使わない沖縄県内初の試みで、豚の腸内環境も改善させた。同大農学部の平良東紀教授は「飼育コスト低減に加え、地域資源の利用で『環境に優しい』付加価値があるブランド豚の創出が期待される」と指摘した。(政経部・又吉嘉例)
実験は昨年10~12月、平良教授と同学部の伊村嘉美准教授が、金城ミートの養豚場で実施した。「泡盛蒸留粕乳酸菌発酵飼料」は液状で、今帰仁酒造が提供した泡盛蒸留粕と、精米の時に出る「破砕米」を混ぜたものに、腐敗を抑える乳酸菌を加えて発酵させた。体重30キロの三元豚の子豚10頭を2組に分け、「蒸留粕」飼料と通常の配合飼料をそれぞれ与えて育てた。
約2カ月後の平均体重は通常の配合飼料で育てた豚が89・7キロ、蒸留粕飼料で育てた豚が86・9キロとなり、見劣りしない結果となった。乾燥重量1キロ当たりの飼料代を比べると、通常の配合飼料が70・49円、蒸留粕飼料が37・38円となり、ほぼ半減した。
肉質では蒸留粕飼料の豚の方が、口溶けの良さを生むオレイン酸などの不飽和脂肪酸が増えた。バラ肉の「おいしさ」や「香り」を評価した官能試験では「柔らかさ」を感じる人が明らかに多かった。
腸内を調べると、蒸留粕飼料を与えた豚は細菌叢(そう)(細菌の集まり)が多様になるなど変化が大きかった。病気の原因となったり、腸内環境を悪化させたりするなど、一般的に有害とされる細菌類の減少も確認できた。
畜産では抗生物質の投与が常態化して耐性菌が生まれることによる、治療効果の低下が問題となっている。人畜に共通する感染症もあり、ヒトに影響する恐れもある。平良教授は「腸内環境を改善して豚の健康を増進することにより、『抗生物質フリー』の豚をつくりたい」と力を込める。
抗生物質を使わないブランド豚「金城アグー」を生産している金城ミートの高安高治さんは「肥育期間は白豚の2倍以上の14カ月。飼料コスト削減は魅力的」と歓迎する。今後は金城アグーにも蒸留粕飼料を試すとし、「腸内環境の改善で健康な豚を生産できるのが一番大きい。安全・安心な肉を提供したい」と強調した。
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