豚の臓器の人間への移植を目指すスタートアップが資金調達
EgenesisのCSOルーハン・ヤン氏
Courtesy eGenesis
あらゆる生物に使用でき、従来技術より簡便な遺伝子編集技術「CRISPR」を使って、人間に移植可能な豚の臓器作成を目指すスタートアップ「Egenesis」が、3800万ドル(約43億円)を調達した。
ハーバード大学の遺伝学者ジョージ・チャーチ(George Church)氏と30歳のルーハン・ヤン(Luhan Yang)氏が2015年に共同設立したEgenesisは、人間の病気や臓器の拒否反応の原因となり得る特定の遺伝子を不活性化することで、豚の臓器を人間に移植可能なものにすることを目指している。
今回の資金調達は、バイオマティクス・キャピタル(Biomatics Capital)とARCHベンチャー・パートナーズ(ARCH Venture Partners)の2社が主導し、Khosla Ventures、Alta Partners、Alexandria Equities、Heritage Provider Networkも加わった。
アメリカの保健資源事業局によると、臓器移植を待つ患者数はアメリカ国内に11万8000人以上いる。2016年には過去最高の3万3500件の移植が行われたが、毎日22人が新しい臓器を待つ間に死亡しているとの推計もある。動物、特にサイズや機能面で人間に近い豚の臓器を活用することは、臓器不足の解決策として期待されている。
Egenesisのチーフ・サイエンティフィック・オフィサー(CSO)、ヤン氏によると、動物から人間への臓器移植(いわゆる異種間臓器移植)には2つのハードルをクリアしなければならない。まず、ウイルスを持つ豚の遺伝子が臓器移植を通じて人間の体内に入ることで、病気に感染するリスク。次に、豚の臓器は人間の体にとって「異物」であるため、臓器移植を受けた人間の免疫システムが拒否反応を起こすリスクだ。1990年代には多くの研究者がこれらの課題をクリアするのは難しいと考え、異種間臓器移植の研究は進まなかった。
しかし、革命的な遺伝子編集技術CRISPRが、その解決に大きな役割を果たそうとしている。ヤン氏は「遺伝子編集技術の進歩が、ウイルス面、免疫面の課題に取り組む助けになると我々は考えている」と語った。
Egenesisに出資したバイオマティクス・キャピタルのジュリー・サンダーランド(Julie Sunderland)氏はBusiness Insiderに対し、「Egenesisの技術は、豚から人間への臓器移植を実現するのに必要かつ複雑なステップを全て考慮に入れている。まさにブレイクスルーだ」と評価した。
Egenesisが考えるプロセス
- Egenesisは最終的に、ウイルス学的な課題と免疫学的な課題の両方に対応し、人間に移植可能な臓器を持つ遺伝子組み換えクローン豚を作ろうとしている。
- まず、豚の遺伝子組み替え細胞を作る。
- これらの細胞から、移植に適した臓器を持つクローン豚を育てる。ヤン氏によると、Egenesisは豚の生産の初期段階にあるという。
- クローン豚の臓器の安全性と有効性をテストし、その後臨床試験へ進む。
動物の臓器を人間に移植する研究を進める企業は、Egenesisだけではない。ユナイテッド・セラピューティックス(United Therapeutics)も同様の異種間臓器移植の研究を進めているし、人間の臓器を豚の体内で育てる研究に取り組む企業もある。多くの企業がこの分野に参入するのは、いいニュースだとヤン氏は言う。
「この分野が再び注目され、活気づくのは良いことだ」
(翻訳:山口佳美)
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