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2017年12月17日日曜日

"見えないもの"が見える、世界が広がる 網膜に直接映像を投影するスマートグラス「網膜走査型レーザアイウェア」(後編) 【未来を創るチカラ Vol.2】

コメント:視力の弱い方が仕方なく使うメガネの様な物で、健常者には、オススメ出来ません。

勉強の為に転載しました。
http://journal.jp.fujitsu.com/2016/12/22/02/

ロービジョン者も健常者も快適に使えるスマートグラスへ

インタビュー前編からの続き)
富士通のスピンオフベンチャー「QDレーザ」は、こうして様々な課題を乗り越えながら、「網膜走査型レーザアイウェア」の開発を進めています。製品化は2018年の予定ですが、国内外の展示会や臨床試験などですでに5000人以上がモニタリングしており、2016年秋には、社会課題解決への貢献、多方面での活用が期待される重要技術として「CEATEC JAPAN」のCEATEC AWARD 2016で最高賞にあたる「経済産業大臣賞」と「米国メディアパネル・イノベーションアワードグランプリ」を受賞。世界中から製品化を待ち望む声が続々と届いています。
網膜走査型レーザアイウェアと「CEATEC JAPAN 2016」の受賞盾
「まずはロービジョン者のための医療機器として、プロダクトの精度を高めていきたいと思っています。ぼやけ、にごり、欠けなど、個人個人の“見えにくさ”に合わせて画像処理ができるように、現在、産学連携で研究を進めているところです。それが実現できたら、次はAR(拡張現実)やVR(バーチャルリアリティ)を体感できるスマートグラスへの応用を進めていくつもりです。このプロダクトが既存のスマートグラスと大きく異なるのは、網膜に直接画像を投影するので、視力もピント調整も必要ないということ。かけるだけで画像や文字情報が脳に直接送られていくので、集中力を妨げませんし、長時間装着していても目が疲れにくいと考えられます。ロービジョン者も健常者も快適に使えるスマートグラスになりうると思っています」(菅原)
「CEATEC JAPAN 2016」表彰式の様子。中央にいるのは同社の手嶋伸貴。

手術支援、エンターテイメント、スポーツ分野での活用も

こうした特長を生かし、将来的には手術支援、作業支援、映画、舞台、ライブ、VRゲーム、スポーツなど、幅広い分野での活用が見込まれています。
「2020年のみならず、いろんなスポーツ大会でロービジョン者用の観戦グラスとして活用されるとうれしいですね。また、ロービジョンのアスリートがこのアイウェアを装着して自分のフォームをチェックしたり、チームメイトと戦略イメージを共有したりできれば、記録更新やレベルアップにつながる可能性もあり、障がい者スポーツもますます盛り上がるはずです。スポーツ分野でのICT活用を推進している富士通と連携して、ぜひ実現させたいですね」(幸野谷)

日本のものづくりを支える様々な分野のプロが集結

株式会社QDレーザ代表取締役社長の菅原 充。富士通研究所在籍時に東京大学と共同研究したナノサイズの半導体微粒子「QD(量子ドット)レーザー」技術を事業展開すべく、2006年に同社を設立。
網膜走査型レーザアイウェアの開発は「QDレーザ」が全メンバー12名で取り組んでいる一大プロジェクト。国内のものづくり系大企業出身者を中心に、多様な人材が集まっています。
「ベンチャーというと若い人たちの会社というイメージがありますが、うちの平均年齢は47歳。“おじさんベンチャー”ですね(笑)。『ビジネスマン人生の集大成に、世界を驚かせるようなイノベーションを起こしたい!』という情熱を持ってやって来たメンバーばかりです。また、レーザー以外の部品開発や製造、臨床研究に関しては外部のパートナー企業や大学と連携して行っており、日本のものづくりを支える様々な分野のプロフェッショナルがこのプロジェクトに携わっています。私はこれを“オールジャパン体制”と呼んでいるんです」(菅原)

ベンチャーと大企業、それぞれの利点を生かして

株式会社QDレーザ取締役兼富士通株式会社経営戦略室シニアマネージャーの幸野谷信次。QDレーザの立ち上げに携わり、マーケティングや広報、資金調達など、様々な面から開発をサポート。
経験豊富な人材が集まっているとはいえ、ベンチャーと大企業では企業風土も文化も大きく異なるもの。イノベーションを実現するために「個人の意見や発想を否定しないこと」「あらゆることに疑問を持つこと」「常時コミュニケーションをとること」をメンバー全員が心がけていると菅原は話します。
「ベンチャーには、部署や上下関係、さらには企業間の垣根を超えて自由に話せる雰囲気とスムーズな連携が必要です。問題が生じたらすぐに展開し、皆でアイデアを出し合い、一つ一つの課題を丁寧にクリアしながら、ここまでやってきました。また、今回のようなハード系の医療機器開発では膨大な予算が必要になるため、資金調達に際して富士通を中心にリスクマネーによるバックアップを受けられたことは非常に助かりました。もちろん、富士通のベンチャー支援制度は成功するかどうか厳しく審査されますが、採用されれば非常にサポーティブ。ベンチャーの自由な雰囲気とスピード感、大企業のリソースと信用性を併せ持つ“スピンオフベンチャー”だからこそ起こせるイノベーションが、このプロダクト以外にもたくさんあるんじゃないかと思っています」(幸野谷)

あらゆるイノベーションは“キセイ”との戦い

プロダクトの開発秘話や今後の展望を語り合う、菅原(左)と幸野谷(右)。
最終的に目指しているのは「人間の視力の拡張」。カメラやレーザーの技術進歩とともにプロダクトもどんどん進化し、遥か遠くのものも、暗い場所でも、鮮明に見えるようになる……そんな未来を菅原たちは思い描いています。
「このプロダクトを生み出すことができたのは、レーザーを網膜に走査(スキャン)するという画期的なアイデアと、そのアイデアを実際に試せる資金・人材・ネットワークがあったから。パートナー企業、大学、投資家、ロービジョン者など、本当にたくさんの方々にご協力いただいたおかげです。これからも自分たちの技術が世界を変えうると信じ、挑戦し続けていきたいと思っています」(幸野谷)
「あらゆるイノベーションは“キセイ”との戦い。“既成”の概念を打ち破り、“規制”を乗り越えてこそ実現します。プロジェクトを必ず成功させて、次世代のものづくりを担う若者を刺激できたらうれしいですね」(菅原)
日本のものづくりのノウハウと情熱が注ぎ込まれた、網膜走査型レーザアイウェア。これまで見えなかったものを映し出すこの“未来のメガネ”は、私たちの世界を大きく広げてくれるに違いありません。


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