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2019年9月5日木曜日

スマホの充電 「急速対応」のはずなのに遅いワケ

https://style.nikkei.com/article/DGXMZO40598540Z20C19A1000000/
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ちょっとした知識や工夫で、充電時間を短縮したり、バッテリーの寿命を延ばしたりできる(写真はイメージ=PIXTA)
日経PC21
普段何気なく充電しているノートパソコンやスマートフォン。実はちょっとした知識や工夫で、充電時間を短縮したり、寿命を延ばしたりできる。最新事情を踏まえつつ、バッテリーと充電の疑問にお答えする。
■Q.「急速」「高速」充電ってどういう意味?
スマホ/タブレット用のUSBケーブルやUSB充電器では、パッケージに「急速充電」や「高速充電」をうたう製品が出回っている。「急速充電」や「高速充電」には明確な定義はない。充電にかかる時間は、充電中に流れる電流量(アンペア)に依存する。「急速」や「高速」は、USB2.0の規格である0.5A(アンペア)を超えた電流量での充電に対応している製品でうたっている場合が多い。
市販のUSBケーブルやUSB充電器のパッケージには、「急速充電」や「高速充電」と記載された製品が多い
しかし、「急速」や「高速」に対応したUSB充電器やケーブルを買えば、必ず急速充電になると考えるのは早計。製品に記載されているアンペア数は、その電流を通す性能を示しているだけにすぎないからだ。
図のように、電力の供給元となるUSB充電器やモバイルバッテリーと、電力を流すケーブル、充電する端末の三者すべてが急速充電に対応することで初めて実現する。
急速充電が可能になるのは、電力供給側とケーブル、充電する端末の三者がそろって対応している必要がある。充電量が大きいほど条件が厳しい
端末が急速充電に対応していることがわかっているなら、充電器やケーブルも対応した製品を選ぶのが正解だ。
■Q.端子によって充電時間が変わる?
USB端子の規格によって流せる電流量は変わってくる。パソコンのUSB端子は手軽に充電に使えるものの、規格上の最大電流はUSB2.0で0.5A、USB3.0でも0.9Aにとどまる。2.4Aや3Aの電流量に対応する充電器やモバイルバッテリーのほうがパソコンのUSB端子に比べて高速に充電できる。
USB給電の標準的な規格や仕様をまとめた。主にアンドロイド端末の充電時に影響する。最近増え始めたタイプC端子は最大で3Aだ。ちなみに、iPhoneなどのアップル製品は独自の仕様となっている
近年、スマホなどのバッテリー容量が増えてきたため、電流量を1.5Aまで拡張した「USBバッテリーチャージ(BC)」という規格が策定された。最近のアンドロイド端末のほとんどはこのUSB BCに対応している。USB充電器を使ったり、充電専用のケーブルを使ったりすれば、USB BCの規格で充電できる。実際、パソコンの通常のUSB端子でも電流は1.2A程度まで上がった。
さらに、最近のノートパソコンやスマホは、端子の形状に表裏がないUSBタイプCの採用が増えており、規格上は3Aまで対応している。一方、iPhoneなどのアップル製品は独自の仕様を採用する。iPhone6以降やiPadなどは高出力の充電に対応している。
なお、タイプCを採用した製品の中には、USB PD(パワーデリバリー)という新規格を取り入れた製品もある。PDの仕様は電圧が最大20V(ボルト)、電流が最大5Aで最大100W(ワット)の給電に対応し、次世代の充電規格として注目されている。
■Q.モバイルバッテリーの充電回数が思っていたよりも少ない
モバイルバッテリーや使用するケーブルなどによって異なるものの実際に充電できるのはバッテリー容量のおおむね7割前後と考えよう。
スマホのバッテリーは大容量化が進み、最新の機種では3000mAh(ミリアンペアアワー)前後が標準となっている。3000mAhとは、3Aで1時間流せる容量という意味。同様にモバイルバッテリーも容量が決まっている。もし手元にあれば底面などを確認してみよう。mAhの記載があるはずだ。
市販のモバイルバッテリーの底面などには、たいてい内蔵する充電池の容量が記載されている。上の製品は1万50mAh、下の製品は1万mAhの容量を示している
例えば、1万mAhのモバイルバッテリーから3000mAhのスマホに充電するとする。数字だけ見て「3回は余裕」と考えると、これは大きな間違いだ。モバイルバッテリーに内蔵されているリチウムイオン電池の電圧は3.7V。これをUSBの電圧である5Vに変換する回路や、ケーブルの電気抵抗、端末側の充電回路などで必ずロスが発生する。
モバイルバッテリーやスマホのバッテリーで用いられるリチウムイオン電池の定格電圧は3.7Vだが、充電時には5Vに変換する。この変換処理に加え、ケーブルの抵抗値が高いほど損失が増え、スマホ側で充電する際にもロスが発生する
充電時には、バッテリーやケーブル、端末がほんのり熱くなる場合が多いが、これは電力をロスしている証拠だ。
■Q.充電専用ケーブルは何が違うの?
スマホ用のUSBケーブルの中には「充電専用」をうたうケーブルがある。このケーブルでスマホをパソコンに接続しても、データの転送や同期はできないので注意が必要だ。文字通り、充電しかできない。
充電専用ケーブルのメリットは、最大1.5Aで給電できる「USBバッテリーチャージ(BC)」の機能が有効になり、充電が速くなる場合があること。充電専用ケーブルは、配線を変更することでパソコンを「充電器」として認識させ、USB BC規格での充電を可能にする。主にアンドロイド端末で効果を発揮する。
ただし充電専用ケーブルは、USB充電器やモバイルバッテリーが備える急速充電規格「クイックチャージ」には対応していない。パソコンのUSB端子を使って、少しでも速くアンドロイド端末を充電したい人向けだ。
通信・充電対応のUSB ケーブルには、電力用とデータ用が配線されている(左)。対して充電専用はデータ用が短絡され(右)、端末側が通常のUSB 端子を「充電器」と認識してUSB BCが有効になる
■Q.端子を変換して使っても大丈夫?
最近はタイプC端子を採用する機器が増えてきた。これまで主流だったUSBマイクロBのケーブルを持っているユーザーも多いだろう。古いケーブルも端子を変換して充電に利用することが可能だ。
下図で示したように、タイプAとマイクロB端子はタイプCへの変換がUSBの規格で策定されており、「使用上は問題ない」(アンカー・ジャパン)という。
なお、ケーブルの両端をタイプCに変換しても、ケーブル自体の機能は元のケーブルのままなので注意したい。タイプCで使えるUSB PD(USB Power Delivery。USBポートを介して短時間で充電できる最新給電規格)など、特別なケーブルが必要なタイプCの機能には対応しない。
タイプAとマイクロBからタイプCへの変換は規格として策定されている(上)。下は、マイクロBをタイプCに変換するアンカー・ジャパン製のコネクター。実売価格は2個セットで799円(税込み)
[日経PC21 2019年3月号掲載記事を再構成]

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