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ウイスキー樽使用のパイオニア「ピュアモルトスピーカー」10年ぶりに復活。ハイレゾ対応2機種
2016年12月5日 13:00
オンキヨー&パイオニアマーケティングジャパンは、ウイスキーの熟成に何十年も使用したホワイトオークの樽材をエンクロージャに使ったパイオニアブランドのハイレゾ対応スピーカー2機種を12月下旬に発売する。1台の価格は、「S-PM50(D)」が186,000円、「S-PM30(D)」が95,000円。「S-PM50(D)」向けのスタンド「CP-50(B)」もペア82,000円で用意する。
型番の「PM」は「ピュアモルト」の略。サントリーでウイスキーの熟成に、何十年も使ったホワイトオークの樽材をエンクロージャの素材としているのが特徴。もともとホワイトオークは木質が固く、綿密だが、アルコールを長時間接する事でさらにその傾向は高まる。通常のパーチクルボード(集成材)と比べ、剛性は約4倍に、内部損失は約2倍にアップ。不要な共振を抑え、同時に豊かな響きを持つエンクロージャ素材になるという。
この「ピュアモルトスピーカー」は、1998年に「S-PM1000」が登場、それ以降もフロア型、ブックシェルフと様々なモデルが登場したが、2006年の「S-PM300」から新モデルは作られていなかった。今回の2機種は、約10年ぶりのピュアモルトスピーカーとなる。
また、ユニットの構成は、1990年代にパイオニアが多数の製品を送り出し、一世を風靡したバーチカルツイン(仮想同軸型)を採用。懐かしさを感じる外観や仕様だが、それだけでなく、ハイレゾ時代にも対応した再生能力に進化したモデルと位置づけられている。
バーチカルツイン方式とは
どちらのモデルも、ツイータをスピーカーの中央に、その上下にウーファを1基ずつ配置したバーチカルツイン方式を採用。この配置は、大型ウーファの中央にツイータを配置した同軸2ウェイユニットを、仮想的に再現できるとされており、仮想同軸型とも呼ばれている。
縦に複数のユニットを並べる事で、より巨大な同軸ユニットを採用したサウンドに迫れるのが特徴。同軸型と同等の点音源による確かな音像定位や、豊かな音場の表現が可能という。
中央のツイータは5cm径。振動板にはオンキヨー製品でも使っているバイオマス素材のCNF(セルロースナノファイバー)を混抄したものを採用。広帯域再生を追求し、従来は2~3kHzのクロスオーバー周波数を750Hzまで下げている。これにより、主要な帯域を中央のツイータが再生し、より進化した仮想同軸方式としている。振動板の形状やコンピューター解析で最適化し、フレームには高強度のアルミダイキャストを使用。上は40kHzまで再生できる。
全体の再生周波数帯域は、PM50が40Hz~40kHz。PM30が50Hz~40kHz。インピーダンスは4Ωで共通。
ツイータの再生帯域を拡大
上下のウーファは、PM50が13cm径、PM30が10cm径。PM50では、ウーファとツイータとの時間軸特性をコントロールするため、ツイータのボイスコイル位置をバッフル面より奥に配置。さらに、振動板からの音の流れがスムーズになるよう、ウェーブガイドもユニット周囲に搭載。クリアな音質と、豊かな音場感を実現したという。
ツイータの背面には、それを覆うように、升のような形のチャンバーを搭載。ウーファからの影響を防ぎ、オリジナルの形状により定在波の低減にも寄与。エンクロージャと同じ、ウイスキー樽材をチャンバーにも使っている。
ウーファのユニットも新開発。アラミド繊維振動板を使っており、入力信号に対して正確な低域再生ができるという。ツイータと同様にフレームには高強度のアルミダイキャストを使い、不要な共振を抑えている。
ネットワーク回路は高域用と低域用の回路を別の基板に分けて採用。クロストークの影響を受けないよう配慮しているほか、高域用には高品位なフィルムコンデンサ、空芯チョークコイルを、低域用にはケイ素鋼板コアチョークコイルを採用。指向性と位相特性に優れるシンプルな構成にこだわっている。
リアバスレフで、スピーカーターミナルはPM50はバイワイヤリング対応、PM30はシングルワイヤとなる。外形寸法と重量は、PM50が237×344×435mm(幅×奥行き×高さ)、PM30が190×277×357mm(同)。重量はPM50が13kg、PM30が8kg。
スタンド「CP-50(B)」はPM50向けのもので、高密度木材を使用。外部からの振動伝達を抑え、PM50のSN感の良さを引き出せるという。スピーカー本体とネジ止めもでき、一体化する事で不要振動の発生を抑制できる。外形寸法は350×380×600mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は10kg。スパイクとスパイク受けなども付属する。
バーチカルツインは点音源へのこだわりから
営業本部の八重口能孝氏は、ピュアモルトの素材と、バーチカルツイン方式の組み合わせについて、「剛性やSN感の良さ、生木ならではの肌触りや風格と、バーチカルツインによる現場の雰囲気、空気を再現する音を実現できる。これにより、コンテンツの情報を正確に引き出し、音楽の世界に没頭できる」と強みを説明。
また、パイオニアブランドがバーチカルツインを多く手掛けているのは、点音源へのこだわりから来ている事も説明。「昔から紡いでいる技術をしっかりと見直し、進化させ、パイオニアブランドの新たな製品としてキッチリ発表していくのも重要」と語り、培ってきた技術と、新たな技術の融合を今回の新製品の背景として説明した。
音を聴いてみる
PM50を試聴した。外観的には懐かしさを感じさせるが、音を出すと非常に面白い。
音像の定位や、音場の広さ、そして音のまとまり感の良さはバーチカルツインならではだ。宇多田ヒカルの「Fantome」から「人魚」、スティング13年ぶりのロック・アルバム「57TH & 9TH」などを聴くと、ヴォーカルの定位や、立体感、生々しさが良く伝わってくる。
分解能の高さや、描写の細かさの点では“現代的なハイレゾスピーカー”という印象なのだが、決して線の細い音ではなく、中低域にかけては非常にパワフル。押し出しが強く、腹や肺にドスドスと音が響くほど低音が強い。
余分な響きを抑えたシャープさを持ちながら、響きは芳醇で、中低域には独特の“濃さ”がある。ついつい聴いていると体が動いてしまうビートの深さが味わい深く、「新時代のピュアモルトスピーカー」を感じさせる部分だ。
なお、背後にまわってバスレフポートに鼻を近づけてみると、ほんのりとウイスキーの香りがして面白い。ウイスキー樽からスピーカー用の木材にする際は、湾曲した木材を温泉につけて柔らかくしてからまっすぐに戻し焼いた表面を削るなどの工程を経ている。使わなくなった樽を再利用しているわけだが、コスト的には新しい木材を用意するよりもやや高価になるという。
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