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松浦 龍夫=日経コンピュータ
2019年12月4日に日本電子計算の自治体向けクラウドが停止した。47自治体などのシステムが一斉にダウンし、業務や住民サービスに影響が出た。ストレージ機器のファームウエア不具合が直接の原因だが、バックアップ機能にも問題があり15%のデータがクラウド上で消失。自治体システムは全面復旧の見通しが付いていない。
「あれ、戸籍証明を出すシステムにつながらない」。東京都中野区役所の職員が異変に気づいたのは2019年12月4日午前11時ごろ。区で使う20のシステムが停止し、戸籍関連の証明書発行業務や区のWebサイトの更新・公開、電子メールを使った外部とのやり取りなどができなくなった。
システム障害が発生した自治体は中野区だけではなかった。大阪府和泉市でもほぼ同時刻に「システムが停止し、住民票を発行できなくなった」という報告が市役所の職員から上がった。
さらに東京都練馬区や千葉県浦安市、愛知県岩倉市など合計全国47の自治体および6つの自治体関連組織(広域事務組合や図書館)でシステムが停止した。原因はこれら自治体が利用している自治体専用IaaS(インフラストラクチャー・アズ・ア・サービス)の「Jip-Base」にシステム障害が発生したためだった。NTTデータ子会社の日本電子計算が提供するサービスである。
「クラウドサービスはダウンしてもすぐに復旧するだろうと考えていた」。和泉市の担当者は障害発生直後の心境をこう語る。しかしこの見通しは甘かった。2019年12月17日現在、各自治体のシステムや業務は部分的な復旧にとどまっており、混乱が続いている。しかもJip-Baseのストレージ障害で15%のデータが消失したことも判明し、復旧に向けてさらなる混乱が予想される。
原因はストレージのファームウエア
12月4日の障害発生を受けて日本電子計算が調査したところ、ストレージ装置のファームウエアにバグがありディスクを読み書きできなくなったことが分かった。同社は翌5日に「ディスク故障が原因」と公表した。その際、「復旧に時間を要する可能性がある」「本日中の復旧は困難」とした。
自治体はJip-Baseの復旧をただ見守っているわけにはいかず、住民サービスの再開に向けて動き出していた。戸籍証明がもらえない、後期高齢者医療制度の還付申請ができないなど住民生活に支障が出ていたからだ。
例えば和泉市はバックアップシステムとバックアップデータを使って、12月5日から応急的に一部のシステムを稼働させた。「バックアップシステムは処理性能の問題で同時接続数に制限があるため、職員による確認や登録に通常より時間がかかる」(和泉市担当者)という状況が続いた。
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