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2020年6月10日水曜日

Apollo GraphQLでWebサービスを開発してわかったこと。 What I learned from developing web services with Apollo GraphQL.

https://www.kabuku.co.jp/developers/develop-web-service-with-apollo-graphql
シェアしました。

Click here for English version.

2018/07/26
初めまして! インターンの長瀬です。普段はWebフロントエンド関連の業務をしています。
今回は、私がApollo GraphQLを使ってWebサービスを開発してみて感じたこと・考えたことを共有します。前半では開発での知見を活かし、GraphQL APIをRESTful APIと比較しながら紹介していきますので、GraphQLなんて使ったことがないよ! という方もお楽しみいただけるかと思います。

tl;dr

  • WebサービスをApollo GraphQLで開発した
    • サービスにおいて、特に複雑なグラフ構造のデータモデル等はなかったが、型定義の自動生成や単一エンドポイントなどの点でGraphQLを使う意義があったと感じた
    • Apollo GraphQLはブラウザ拡張やapollo-codegenなどの開発支援も充実しており、快適に開発ができた

GraphQL, Apollo GraphQLについて

GraphQL, Apollo GraphQLについてすでにご存じの方は読み飛ばしていただいて結構です。

GraphQLについて

そもそも、GraphQLはWeb APIのためのクエリ言語です。RESTfulなAPIが抱えがちな以下の課題を解決できます。
  1. エンドポイントやURLのクエリパラメータが煩雑になる
  2. 目的のリソース以外の余計なデータがついてくることがある
  3. リソースをフェッチするために必要なリクエスト数が多くなりがち

エンドポイントやURLのクエリパラメータが煩雑になる

たとえばレスポンシブ対応の一環としてモバイルとPCで別サイズの画像を返したい時や、件数の多いデータをページネーション形式で返したい場合など、場合分けが必要になってくるにつれてURLのクエリパラメータが煩雑になってしまいます。
また、APIのエンドポイントの構造もAPIが大規模化するにつれて複雑になっていきます。
対して、GraphQLのエンドポイントは単一であり、またURLのクエリパラメータは使わずにGraphQLのQuery内に記述します。QueryはGraphQL APIが提供しているデータのうち何がほしいかを簡潔に記述したもので、HTTPリクエストのbodyに乗せて送ります。
例として、ブログサービスにおいて特定の投稿以降に投稿された投稿を20件分取得したい場合には、以下のようなQueryを記述します。
{
  latest(after: "ID", count: 20) {
    cursors {
      after
    },
    posts {
      title
      thumbnailUrl
      description
    }
  }
}
QueryはURLのクエリパラメータやセッション等を使うより可読性や表現力が高く、静的な型付けがされるため(afterはString, countならInt)、エディタでの自動補完やコード・ドキュメントの自動生成などの恩恵を受けることができます。RESTfulなAPIでもopenapi-generator(swagger-codegen)などを使うことで同様なことが可能ですが、GraphQL APIの場合はGraphiQLというAPIのテストツールやエディタにおいてQuery自体に対して補完が効くため非常に便利です。また、GraphQL APIサーバはIntrospectionという機構を持っており、cliツールなどを利用してすでに動作しているAPIサーバからAvailableなQueryや型などの情報を吸い出してファイルにダンプできます。このファイルをコードの自動生成・補完に利用するというしくみです。
GraphiQLでAPIをテストする様子
サーバでこのクエリをどのように処理するかというと、クエリで指定されるフィールドごとにresolverという関数を定義し、対応するデータをDBなどのデータストア等から取得して返すようにします。resolverの書式は以下の通りです。
fieldName(obj, args, context, info) { result }
見ての通り、resolverは最大4つの引数を取ります。
  1. obj には、指定したフィールドの親フィールドのデータが含まれています。親フィールドが存在しない場合(ルートのフィールドの場合)には、設定値が返されます。
  2. argsには、クエリで渡した引数(先の例のaftercountに該当)が含まれています。
  3. contextには、すべてのresolverで引き回して使いたいような、セッション・ヘッダ・APIエンドポイントのURLなどの情報が含まれます。たとえば「ログイン済みのユーザーのみがデータへアクセスできるようにしたい場合」や、先程挙げた「モバイルとPCで別サイズの画像を返したい場合({device: 'pc'}などとしてデバイスタイプの情報を指定する場合)」などで有用です。
  4. infoでは、そのフィールドの名前やパス(ルートからそのフィードを指定するまでの道筋)、親フィールドの型などのメタデータが含まれています。
また、Queryと同様にして、GraphQL APIが提供しているデータに変更を加えたい場合にはMutationを、データに対するMutationを監視して常に最新の状態を維持したい場合にはSubscriptionを書くことができます。GraphQL APIはこれらのQueryMutationSubscriptionの3つの操作から成り立っています。

目的のリソース以外の余計なデータがついてくることがある

ブログサービスの例で、あるユーザーのidからユーザー名を取得したい場合、RESTfulなAPIでは/users/:id/users?id='id'に対してリクエストをし、以下のようなレスポンスを得るはずです。
{
  name: "haruka",
  id: "19900204",
  posts: [],
  subscriptions: [],
  subscribedBy: [],
  thumbnailUrl: []
}
ほしいデータはユーザー名のみなのですが、購読・被購読者や過去の投稿の一覧までが返されてしまいます。アプリケーションのアクティブユーザー数が増えてくると、クライアント<->APIサーバおよびAPIサーバ<->データストアの通信回数が大きく増えて問題になりかねません。そこで、GraphQLでは以下のようなQueryでリクエストします。
{
  user(id: "19900204") {
    name
  }
}
必要なフィールドのみを指定するため、余分なデータが取得され返されることはありません。
{
  name: "haruka"
}

リソースをフェッチするために必要なリクエスト数が多くなりがち

先程のレスポンスが、以下のように購読者一覧を含んでいたとします。
{
  name: "haruka",
  id: "19900204",
  posts: [],
  subscriptions: [
    "/users?id=19910917",
    "/users?id=19861028",
    "/users?id=19851025"
  ],
  subscribedBy: [],
  thumbnailUrl: []
}

全購読者のユーザオブジェクトを取得しようとすると、計4回のラウンドトリップが発生します。先程の例で紹介したように、GraphQL APIでは必要なフィールドだけを指定して1度の通信ですべてのデータを取得するため、通信コストが大きく削減できます。
また、facebook/dataloaderなどと組み合わせることで、深くネストしたクエリについて、キャッシュやバッチ処理を利用し効率的にデータストアからデータをフェッチできます。こちらはAPI<->DBについての話題であり、GraphQL APIに限らずさまざまなシーンで利用可能です。

Apolloとは

Apollo vs Relay

ApolloとはGraphQL APIのクライアントライブラリの1つです。ほかにはGraphQLの開発元であるFacebookによるRelayが有名ですが、対応しているクライアントや開発ツールの充実度からApolloに分があると考え、こちらを採用しました。
ApolloRelay
対応クライアントReact.js, Vue.js, Angular, Swift, Java, etc…React.js
開発ツールの充実度launchpad, engine, codegen, ブラウザ拡張等盛りたくさんplayground環境
ドキュメントの充実度充実(動画、 ブログ、 Webサイト等)比較的充実(Webサイトのみ)
ローカルステートの管理apollo-link-stateを利用可能Redux, MobX, etc..
Apolloはモックサーバを手早く簡単に作成・公開できるApollo Launchpadや、APIサーバの監視・解析ツールであるApollo Engine、そしてAPIサーバを解析してクライアント毎にコードを自動生成するapollo-codegen(apollo-cliというリポジトリ名に変わりました)といった充実した開発ツールが用意されています。

apollo-link-stateによるローカルステートの管理

Apolloが注目されている理由の1つとして、公式が「apollo-link-stateを利用してローカルステートを管理することで、ReduxやMobXといった他の状態管理の機構を使わなくて済む」ことを謳っている点があります。apollo-link-stateにより、single source of truthなデータストアでリモート(API)のデータとアプリケーションの状態の両方を管理することが可能だということです。
ブログサービスの例で考えてみます。ユーザーが過去の投稿の一覧を複数選択し、まとめて削除できるような機能を作りたいとしましょう。apollo-link-stateを使うことで、過去の投稿一覧のQueryは以下のように書けます。
query allPosts($userId: ID!) {
  allPosts(userId: $userId) {
    id
    content
    selected @client
    author {
      id
      name
      thumbnailUrl
    }
  }
}
@clientというディレクティブをこのように使うことで、APIではなくブラウザのインメモリキャッシュからデータをフェッチできます。同様に先ほど紹介したmutationについても、DB等のリモートのデータではなく、キャッシュのデータに変更を加えるようにできます。
mutation selectPost($postId: ID!) {
  selectPost(postId: $postId) @client {
    selected
  }
}
このようにして、ローカルステートとリモートのデータを共通のインタフェース(=GraphQL)で管理し、single source of truthを実現しています。
しかしながら、実際のユースケースではほかのRESTfulなAPIと組み合わせて使うケースがほとんどかと思います。その際はapollo-link-restというパッケージを利用できます。こちらはapollo-link-stateとは異なりunder active developmentな状態ですが、以下のようにしてRESTfulなAPIに対してQueryMutationを発行できます。
query allPosts {
  allPosts @rest(type: "Post", path: "/posts") {
    id
    content
  }
}
mutation publishPost(
  $someApiWithACustomBodyKey: PublishablePostInput!
) {
  publishedPost: publish(input: "19900204", body: $someApiWithACustomBodyKey)
    @rest(
      type: "Post"
      path: "/posts/{args.input}/new"
      method: "POST"
      bodyKey: "body"
    ) {
    id
    title
  }
}

実際に開発してみて

開発の流れ

実際にApollo GraphQLを使ってWebサービスをゼロから作ってみました。大まかな開発の流れは以下のようになりました。
  1. Node.js(with TypeScript, graphql-yoga)でAPIサーバを書く
    • graphql-yoga: Apollo, Relayに対応したNode.js向けのGraphQL APIフレームワーク Expressのミドルウェアを利用可能
  2. GraphQLでAPIのスキーマを書く
  3. 2のスキーマから、gql2tsというツールでTypeScriptの型定義を生成する
  4. 3の型定義を利用して、resolverを書いていく
  5. GraphiQLでAPIをテストする
  6. angular-cliでアプリケーション側(フロントエンド)のスケルトンを作成する
  7. APIに対するクエリをGraphQLで書く
  8. apollo-cliを使って、APIサーバのインストロペクション結果と7のクエリから、フロントエンドで使うTypeScriptの型定義を自動生成する
  9. 8の型定義を使ってフロントエンドのロジック部分を書いていく(apollo-angularを利用)

Apollo GraphQLのよかったところ

今回の案件ではフロントエンドとサーバサイドの両方でTypeScriptを利用したのですが、どちらの環境でもスキーマから自動生成された型定義を利用してスムーズに開発を進めることができました。またフロントエンドではフレームワークにAngularを利用しましたが、QueryのレスポンスはObservableで返されるため、違和感なく使うことができました。
さらに、ブラウザ拡張のApollo Client Developer Toolsも便利でした。Developer Toolsには以下の機能が備わっています。
– GraphiQLをその場で実行する(本来であればAPIサーバと別のポートでGraphiQLサーバを立ち上げて、ブラウザでそこにアクセスして利用します)
– JavaScriptから発行されたクエリのログの確認、クエリの編集・再発行
– apollo-link-stateでキャッシュに書き込んだ値の確認(apolloはクエリのレスポンスを勝手にキャッシュしてくれるのですが、その内容も確認できます)

Apollo GraphQLのつらかったところ・気になったところ

特に「GraphQLのここがつらかった」というところはありませんでした…強いて言うなれば、開発の中盤で「これGraphQL APIにする意味あったんだろうか…(OpenAPIでもよかったのでは)」という気持ちに襲われたことくらいです。しかし一通り開発を終えると、エディタ・GraphiQLにおけるクエリの補完や、GraphQLが提供する型システムに魅力を見出していました。前半で解説したとおり、通信コストやパフォーマンスの点でもGraphQL APIに分があるはずです。
気になった点としては、今回はSubscriptionを使う場面がなかったため、どう実装し利用すればよいのかが気になっています。

さいごに


Apollo GraphQLを使ってゼロからWebサービスを開発し、得られた知見を共有させていただきました(どちらかというとGraphQL・Apolloの解説がメインとなってしまいましたが…)。Apolloは対応するクライアント・Webフロントエンドフレームワークが多いことから、これからより一層注目されていくと考えています。この記事を読んで「Apollo、さっそく私も試してみよう!」という方が出てきてくれたらうれしいです。

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