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2020年07月12日 08:31 毎日新聞
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写真 クレジットカードの不正利用被害額の推移 |
クレジットカードの番号などの情報を盗まれ、知らない間に不正に使われる被害が急増している。2019年の被害額は約220億円で14年の3倍以上に達した。店舗での決済時に受け取ったカードを店員が盗み見たり、インターネット上の闇サイト(ダークウェブ)に流れた情報を悪用したりする手口が横行している。ネット販売などキャッシュレス決済が広がる中、決定的な対抗策は打ち出されていない。
警視庁は6月、他人のカード情報を使って航空券を購入したとして、中国籍の高校2年の男子生徒(16)=横浜市=を電子計算機使用詐欺容疑で逮捕した。生徒は19年10月から同市内のスーパーでレジ担当のアルバイトをしていた際、差し出された客のカードの有効期限やセキュリティーコードを覚えてメモ帳に書き写していた。カード番号は売上伝票から把握したという。捜査関係者によると、複数のアルバイト先で90人以上のカード情報を得ていたとみられる。
カード情報があれば暗証番号なしで買い物をすることが可能で、生徒は航空券などを購入し、東京ディズニーランド(千葉県浦安市)やユニバーサル・スタジオ・ジャパン(大阪市)に遊びに行っていた。ホテル代やタクシー代も合わせた被害額は、今年2月までの4カ月近くで1000万円を超えるとみられている。
カード会社でつくる「日本クレジット協会」(東京都中央区)によると、偽造なども含めた不正利用の19年の総被害額は273億8000万円に上った。このうち番号を盗む手口の割合が増えており、統計を取り始めた14年は67億3000万円で全体の59%だったが、19年は222億9000万円で81%を占めるまでになった。
実物のカードを盗み見る単純な手口だけでなく、盗まれたカード情報がネット上で取引されていることも明らかになってきた。情報セキュリティー会社「S&J」(東京都港区)の三輪信雄社長は「(匿名化ソフトを使って閲覧する)ダークウェブ上でカード情報が売買されている」と指摘する。カード1枚の情報が35ドル程度で売買され、決済には匿名性が高い仮想通貨が使われる。カード利用残高が多いと100ドル近くに値上がりするという。三輪社長は「カード情報さえ分かればネット決済ができる。低リスクで手っ取り早い」と説明する。
被害が拡大する背景には、キャッシュレス決済が増え続けていることがある。国内の全支出に占めるクレジットカード決済の割合は、19年は14年に比べ8・6ポイント増の24%に上昇した。ネット販売では手元に実物のカードがなくても購入手続きができる。
政府は18年6月に施行した改正割賦販売法で、店舗にカード情報を適切に管理することを求め、オンライン決済での成りすましを防ぐための対策の導入を義務づけた。業界側も、利用者に自分でカードを差し込む決済端末がある店を利用することや、支払時にカードから目を離さないことを呼びかけるが、被害に追いついていない。オンライン決済ではカード裏面などに記載されているセキュリティーコードの入力も推奨しているが、ダークウェブ上ではこの情報も流出しているとみられる。
一方、不正利用されたとしても条件を満たせばカード会社に補償される制度もある。同協会は「利用明細を必ず確認し、身に覚えのない請求があればカード会社に連絡してほしい」と呼びかけている。【岩崎邦宏】
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